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第1話

『ユアンくん!お菓子作ってきたの!食べて?』 『ユアンくん!今日は放課後遊ばない?』 『おいユアン!ここわかんねえから教えてくれ!』 「うん、いいよ。」 俺は面倒事は嫌いだから、なんでも笑って引き受ける。 だってその方が楽だろう? イギリスから日本へ留学してきて4ヶ月程。 俺が留学してきたこの学校には、数ある教科の中から自分で選択したい授業を選択して受ける、という制度がある。 親が音楽家だから、音楽を学びにここへ来たのはいいものの…。 日本人の高校生は音楽に関する知識が本当に浅い。 テストなんて誰にも負けないし、実技なんて筆記より、もっと余裕だった。 ある一人を除いて。 唯一、筆記で俺よりいい点数を取った男。 選択科目は同じでもクラスは違うし顔は一度も見たことない。 ただ、噂が広まっていた。 『留学生のユアン・カノーヴィルより高得点を取った男がいる。名前は…』 「希見 春音( きみ はると)だったかな。」 俺に音楽で勝てる男。 単純に興味が湧いた。

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