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03-09
「やっぱ、すごい狭い。なんか、濡らすものない?」
「そこの…引き出し。オリーブオイルのハンドクリーム…」
秀野が手を伸ばし、ぬるぬるするものが大量に塗りつけられた。指を束ねて解されたところに質量のある硬い熱が侵入してくる。とくとくと脈を伝えてくる内側が秀野の形に伸縮するのがわかる。
単純に気持ちいいとは思えないけれど掴まえつつある波の中で、秀野を受け入れることがとにかく嬉しい。今まで秀野に対してそんな気持ちを持たなかったのが不思議なほど、愛おしさに震えた。
「……っは…あっ、……あぁんっ…」
「ほら、…ちゃんと繋がった…」
ぐいと奥まで貫かれながら、自分のものとは思えない喘ぎ声が耳を汚す。馴染ませるように中から奥を揺すられると恥じらいもなくもっととねだるように足を開いた。
「悦士っ……、悦士……」
名前を呼ぶたび愛おしいという気持ちで占められていく。自分よりも大きな体で包み込まれるように抱きしめられ、広い背中に手を回す。
こうしてみると何もかもがぴったりなのだと思った。情欲に急かされながらも、初めての麻生の体を気遣い大切なもののように触れてくるのがわかる。
「……聖?大丈夫か?」
耳元から手は頬へ伝い、顔を柔らかく包み込んでくれる。快感に浸されて霞む視界に、優しく見つめてくる秀野の顔があった。
「悦士……映画、撮ろう…」
「……も、馬鹿だな…、お前は。あんまり可愛いこと言うなよ。好きになり過ぎるから。好きだよ、聖、好きだ…」
耳を濡らす声が、体に埋め込まれた熱が、自分の全てをぐちゃぐちゃにしていく。自分さえ知らない最奥を激しく突かれ、底知れない快感に溶かされていく。俺も好きだと繰り返しながら、必死に首元にすがった。
行き着くところは爆ぜる光だった。灼け切るような閃光に目眩がした。
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