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第1話 魔物殺しと狼の魔物
「はっはっはっは。魔物よ観念しろ」
ふっ……。さすが俺。完璧だ!
「ちくしょう……離せよ!」
目の前の獰猛な魔物は、俺の華麗なる束縛魔法で身動きができなくなっている。
俺の生み出した光球から伸びる光のムチが、四肢を束縛して離さないのだ。
大きな獣の耳のついた魔物――おそらく、狼の魔物だろう――は、こんな状況になってもなお、俺を威嚇するように鋭い眼光を向けてくる。
「諦めろ。この魔法に捕らわれて脱出できた者はいない」
「……ちくしょう……。なんなんだよお前は! 俺はただ、ここで静かに暮らしてただけなのに……」
「麓の村から頼まれたんだよ。『山中に巣くう凶悪な魔物を始末してくれ』ってね。俺も魔物退治で食い扶持を稼いでる身でな、これも仕事の一環だ。悪く思うなよ」
腰に下げた大振りの剣をしゃらっと引き抜き、身動きの取れない魔物の青年に近付くと、彼は観念したように力無くうなだれた。
「……ちくしょう……。……さっさと殺せよ……」
「せっかちだね、君は」
言いながら、一閃。
俺の剣が魔物の衣類を切り裂き、肌に紅い筋をつける。
「これからがお楽しみの始まりなんだよ」
俺から笑みを向けられた魔物の瞳に、脅えの色が浮かんだ。
ああ……これだよこれ……。この恐怖に歪んだ顔が見たくて、俺はこの仕事をやっているんだ。だから俺は剣を振るう。
「ぐぅっ……かぁっ……ッッ……」
悲鳴を懸命に堪える姿に、言葉にならない快感が背筋を駆け上る。
剣を振るたびに、服は裂け魔物の身体に紅い線が刻まれる。それが楽しくてゾクゾクして……ああ……最ッ高……。
嬲り、切り裂き、ひと通り満足した俺は、剣を腰の鞘に収め青年を見下ろした。
「どうだ? 自分の悪行を少しは悔いたか?」
「……俺はなにもしてない。ここで静かに暮らして……」
「まだ自分の立場が分かってないようだな。喉が渇いただろ? いいもの飲ませてやるよ」
ズボンからチンコを取り出すと、的を目掛けて小便をじょぼじょぼと放出する。
的はもちろん、魔物の口だ。
「ッッ!? 止め……んんんんッ……」
口を閉じ、体内への小便侵入をなんとか防ごうとしている姿も、俺にとってはご馳走だ。
しかし、体内には入らずとも、髪も耳も小便にまみれ、傷口からは容赦なく体内へと入っていくのだ。
どんなに惨めな気分だろうか?
捕らわれ刻まれ、挙句の果てに小便かけられて……。
小便が終わると、全身を濡れ鼠にさせ下を向く絶望的な姿がある。
髪からぽたぽたと垂れ落ちる水滴が、俺と彼との力の差を象徴しているようだ。
「……もう……止めてくれ……。どうせなら……一思いに……」
「ふふ……。そうだな。もう十分に楽しませてもらったしな。最後に、君を殺す男の名を教えてやろう。ジャック・スカルフォンだ。この名を抱いて冥府へ旅立て!」
惨めな命を断ち切るべく脳天目掛けて剣を振り下ろした瞬間――。
強い衝撃と共に、俺の意識は途絶えた。
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