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4. Your Pleasure 7
一限目が終わった後の休憩時間には、何となく気怠い雰囲気が漂う。
なんせまだ一日は始まったばかりで、あと五時間もの日課時限が残ってる。でも俺はこの席が好きだから、授業を受けるのが楽しい。
ここは廊下側の、前から二番目の席。俺の前に座るのはもちろん李一くん。手を伸ばせば届く距離に好きな人がいるなんて、最高のポジションだと思う。
隣のクラスの人たちがぞろぞろと廊下を移動していくのが見えて、開いた窓から弾んだ声が聞こえてきた。
「カイくん! 今日の体育、棒高跳びなんだって。棒とカイくんのコラボ、いいよね。ムラムラしちゃう……!」
「アホか」
「あ、リイくん! おはよう」
挨拶をされた李一くんは、窓越しに賑やかな声の主に笑いかける。
「おはよう、七瀬」
その笑顔が本当に穏やかであまりにもきれいだから、俺は思わず魅入ってしまう。
李一くんの中学時代からの友人、七瀬くんはめちゃくちゃかわいい。そして性格がちょっと、いやかなり変わってる。だからうちの学校で、七瀬くんは李一くんと同じか、もしかするとそれ以上に有名人だ。
七瀬くんの隣で呆れた顔をして溜息をつく彼氏は、同性の俺でも見惚れるぐらいカッコいい。
冷たくあしらってるように見えるけど、彼が七瀬くんを見る目はいつだってすごく優しい。本当にお似合いのカップルだと思う。
不意に李一くんが俺を振り返って口を開く。
「あの二人、あれで付き合ってないんだって。おかしいよね」
そんなことを言って、李一くんは小さく笑った。え? 本当に?
「へえ、そうなんだ」
不思議だなと感じる反面、李一くんと俺の関係だって不思議だよね、と思う。
俺は李一くんに好きとか言われたこともなくて、好き同士じゃないのにセックスしてしまっていて、そういえば俺は李一くんのことをたいして何も知らなくて。
李一くんにとって俺は、何となく手近なところに都合よくいる下僕なんだろうけど。
でも、この素敵な王子様の下僕が俺だけだったらいいなとか。そんなことを思ってしまう俺は、やっぱり李一くんが言うように変態なんだと思う。
「李一くん。俺、もうちょっと料理のレパートリー増やしたいんだけど、何が好き?」
「野菜」
「野菜ね、わかった。何の野菜がいい?」
「放課後、細くて長い野菜。買ってこい」
「えっ」
「返事」
ねえ、それ何に使うの?
こっちを見る目が怖くて、俺はその言葉を呑み込む。そんな顔もかわいいと思ってしまうなんて、恋の病はもう治る見込みがないぐらいにこじれてる。
だから俺は今日も、大好きな人の言葉に従順に頷く。
「はい、喜んで」
"Your Pleasure" end
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