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第2話
高橋旭には好きな人がいた。
一学年上の先輩。
小野山学(おのやま がく)は、高橋旭の初恋の人だった。
出会いは、旭が小学1年生の時。学校ではなく、習い事の空手道場だった。学はその道場の息子で、旭のような素人から見ても圧倒的な力を持っていた。日々鍛え上げられた肉体は、小学生でも引き締まっており、動きに無駄がない。そして、武道の精神を叩き込まれた彼は、常に冷静で、向上心の高い男だった。
旭にとって、それはとても輝いて見え、ひどく心が震えたことを高校生になった今でもよく覚えている。
学は、下に妹がいるためか、とても世話焼きだった。
年は近いが弟気質の旭に対して、とても良くしてくれた。稽古以外でも会うようになって、よく一緒に遊んでいた。互いの家へ泊まりに行くこともあった。そうやって、兄のように慕い、強い憧れを感じながら日々を共に過ごし、いつの間にか、それは恋情に変わっていた。
自覚したのは、旭が中学2年生の時だ。
その日も、卒業式だった。学は、空手が強い私立の高校へ行くことが決まっていた。
田舎だったため、必然と中学校までは同じ学校へ行くことが出来たが、高校になると私立を含め選択肢が増えた。そのため、また一緒に過ごせるのか分からなかった。共に過ごした校舎から学が居なくなるのが、とても寂しかった。これから学と一緒に過ごす見知らぬ人達が羨ましく、疎ましいと思った。
それを思った時、学への思いが、憧れだけではないことに気づいたのだ。
そして、必死に勉強して、学の入学した私立高校へ入った。
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