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第5話

 不意に、チャイムが鳴る音がした。 母親が出るだろうと動かずにいたが、誰も出る気配がない。そういえば、自分は夏休みだが、母親はパートで、宅配便が来るからと頼まれていたことを思い出した。面倒くさいと感じながらも1階に降り、リビングから印鑑を取る。寝間着にしている中学のジャージのまま、ろくに相手も確認せず、旭は扉を開けた。 開けた瞬間、旭は固まった。 予想もしなかった―――けれど、先程まで自分が思い出していた人物が目の前に居たからだ。 「…がっくん…」 「よお」 学は無地のTシャツにジーンズというラフな格好で、玄関先にいた。手にはケーキ屋の箱が握られていた。 「ど、どうしたの?てか、稽古とかは?」 「あ?今日はお盆だろ?稽古も部活も休みだろうが」 「あ…そっか」 迂闊に扉を開けてしまった自分を、旭は悔いた。久しぶりにまともに顔を合わせる相手と、どうやって話したらいいのか分からない。 「今日、おばさんは?」 「…パート行ってる」 「なんだ、おばさんの分のプリンも買ってきたんだけど」 「ぷりん?」 「お前好きだろ?和月屋の小豆プリン。今日安かったからさ、一緒に食おうと思って。家、上がっても良いか?」 「え?…えっと…」 いつも通りの学の態度に戸惑い、旭は言葉がすぐに繋げなかった。それをチラリと学は見ると、「上がるぞー」と言って、やや強引に玄関の中に入ってきた。

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