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やっぱり俺が忘れられなかった陸だった。
あんなに俺のこと嫌いだったんだな。
だから別人のフリ…
でもさ、千秋が俺のこと彼氏だって言ったタイミングで消えて、俺のこと大っ嫌いって叫びながらもあんな泣き顔見せられたらさ…
ちょっと期待しちまうじゃねぇか…
千秋にはあの後謝り、今こうしてもう一度会っている。
『…太。啓太!!』
『あっ…!!おう。悪い。』
『さっきからボーッとしっぱなし。大丈夫?』
『大丈夫大丈夫!!』
『はぁ…あのさ…』
『ん?』
『啓太の忘れられない人って白石君でしょ?』
『は…はぁ!?何言って…あいつ男…』
『もういいから…この際、男だからとか女だからとかもういい。私、気付いちゃったんだ…』
『えっ?』
『啓太のあんな顔見たことないよ…白石君を探してる時の顔…真剣だった。』
『…そんなに?』
『うん。白石君のこと好きなんだろうなって…』
『ごめん。』
『いいよ。そもそも身代わりでもいいって言ったのは私だしね。でももうやめる。』
『やめる!?』
『身代わりやめる。あんなに近くにいるんだもん。啓太は白石君追いかけなよ。』
『でも…探し出した時、大っ嫌いって言われた…』
『それはさ、きっと理由があるんだよ。シャンプー中で目隠しされてたから顔は見えなかったけど、私が啓太の彼女って知った途端、手が震えてた。啓太絶対白石君捕まえなよ。』
『千秋…』
『こういう時ね、女の方が強いんだよ。きっと。だから私は大丈夫。』
『ごめんな。』
『いいから…』
そして俺たちは別れた。
女にこんな気を使わせて…
確かに女性の方が強いのかもしれないな…
俺は………すごく弱い。
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