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第9話

「・・・それで、ど、どうしたの?」  天ちゃんの寂しげな笑みにどうしていいか分からず、少しあたふたとした態度を取ってしまう。そして、そんな言葉しか掛けることが出来なかった。  俺の様子に小さく苦笑を零す天ちゃんは、少し俯き、更に声のトーンを落として続けた。 「俺は・・・どうもしなかった。すると、蓮はいつの間にか戻ってた。・・・いや、前とは変わっていたのかもしれない。けれど、俺たちには分からなかった。」   ・・・俺たち?と引っかかる言葉もあったけれど、黙って頷き、そのままじっと話を聞いていた。 「・・・アイツは綺麗に隠してみせたんだ。それからかな、アイツは強くなったよ。・・・弱音を吐かず、俺たちの前で泣く姿も見せなくなった。・・・俺にはそれが、寂しかった・・・だから、海斗。お前だけは傍に居てやってほしいんだ。・・・俺たちから離れて行ってしまったからな。」  ギュッと強く握っていた拳を解くと、天ちゃんはまた同じ様に笑みを浮かべながら、俺の髪をぐしゃぐしゃと荒っぽく撫でた。 「・・・天ちゃんに言われなくても、蓮さんの傍にずっと居るつもりだよ、俺。」  俺は胸を張って、自信ありげにそう天ちゃんへ宣言すると、天ちゃんは満足気に、そして嬉しそうに「そうか。」と返事をした。  それと同時に、天ちゃんの携帯が着信を知らせた。天ちゃんは少し首を傾げながら携帯を確認すると、小さく苦笑を零した。 「・・・まったく、直接言えよな。」  少し呆れた様な天ちゃんの声に、首を傾げながら、もしかして、と思いながら様子を窺う。そして、「ほら。」と言って天ちゃんは画面を俺へ見せると、それは予想通り、蓮さんからのメールだった。 『海斗の調子はどうだ? 4限目が終わらないとそっちに行けそうにない。 悪いが、よろしく頼む。それと、何かあればすぐに連絡してくれ。なるべく早く行くから。 それから、終わり次第迎えに行くから、帰る準備をしとく様に言ってくれ。』  迎え・・・ってことは送ってくれるのかな?それとも、一緒に帰ってくれるのかな?と少し嬉しい気持ちが広がったが、昨日のこともある。・・・そのせいか、少しの不安も感じた。 「・・・蓮さんも帰るのかな?」  何気なく言った一言に、小さく笑みを零す天ちゃんは「さぁ?でも、そんな顔してたら、蓮の奴、大事な仕事を放り出してでもお前と一緒に帰るかもな?」とニヤリと意地悪そうな笑みを浮かべながら言ってのけた。 「え!?蓮さんに迷惑はかけたくない!」 「なら、少し寝ろ。それとその腫れた目も冷やしとかねぇとな。」  天ちゃんはそう言って俺へベッドへ行くように促し、保冷剤を取りに冷蔵庫へと向かった。  俺は「はーい。」と小さく返事をしながら、日当たりの良いベッドへと向かう。そこはすでにポカポカに暖まっており、寝転がるとその暖かさに包まれ、うとうととし始めた頃に天ちゃんが保冷剤を持ってきてくれた。 「眠いだろうが、これで冷やしておけよ。」  差し出された保冷剤を手に取ると、冷たさにビクついてしまった。 「・・・天ちゃん、ありがとうね。」  保冷剤もだが、泣いてしまったこと、相談に乗ってくれたこと、それらに関しても合わせてお礼を言ってみた。すると、天ちゃんは「はは、素直な感じはらしくねぇが、・・・まぁ、よろしく頼むな。」と言って受け取ってくれた。  モヤモヤもなくなったし、お礼も受け取ってもらえたし、それにポカポカに暖まったベッドに寝転がっていると、寝不足も相まってか、スゥと静かに眠りに落ちた。

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