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俺が俺でなくなる
「さなえ」
「なぁに?」
「おとうさん今日仕事で帰れないんだ…一人でお留守番できる?」
「えぇ…」
一人で怖いのは相変わらずだった
「ごめんねぇ。ここから出ちゃだめだよ」
「はい…」
「行ってくるね」
散々抱かれた俺は動けない
出ていこうにも出ていけない
男が家を出て数時間。
どうにか重い腰をあげ男が用意してくれていた食事を食べソファーへ座りテレビを見る。
もうすぐ今年が終わる…
ガチャ
男が帰ってきた?仕事が早く終わったのだろうか?
「おとうさん。おかえり…えっ…」
「さなえ」
「…」
茜と両親、蓮華がそこにいた…
どうしよう…どうすれば…
「おとうさんはお留守です。おかあさんも。帰ってください」
頼む…騙されてくれ…部屋はテレビの明かりしかないので幸い暗い。表情は見えないはず…
「さなえ。もういいよ」
「…」
「さなえ」
「いやっ!!離して!!」
触らないで…茜が汚れてしまう…
「さなえ…」
「帰って!!帰ってよ!!」
散々抱かれたから力が入らず抱き締める茜を振りほどけない
「離して!離して!」
「さなえ!!」
唇を茜のそれで塞がれた
胸を押したってびくともしない…
「んっ…やめ…て…」
「さなえ」
何度も何度も繰り返されるキスに力が抜けた。それを茜が横抱きにして運ぶ
「いやっ!!やめてっ!!茜!!よごれちゃう!汚れちゃうから!!」
「汚れねぇよ。お前は汚れてない!」
「放してよ…」
「いやだ」
「ごめん。さなえ」
「な…に…」
蓮華に何か打たれた。意識が遠退く…
ここから出たら茜たちまで何かされてしまうかもしれない…茜たちまで巻き込みたくない…どうにか…どうにかしなくちゃ…
そんな気持ちとは裏腹に目の前が真っ暗になっていった
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