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看病
今朝、美紅を連れて保育園へ行くと隼人の姿がなかった。あのやんわり微笑む笑顔が俺の癒しなのに。
迎えに出てきた保育士にそれとなく聞いてみる。
「江森先生はお休みですか?」
3歳児クラスの担任でもある苗村先生はニヤリと笑い思わせぶりに話し始めた。
「あれ?高嶺さんはご存知だと思ってました。江森先生、熱でお休みですよ」
熱!?熱だって?
昨日電話で話した時にはそんなこと一言も言わなかった。…熱があったのか?
俺の残業が終わり、美紅を寝かしつけてひと段落したのは0時を回っていた。
「毎日一言でもいいから声が聞きたいです」
なんて可愛い事を言われたらしない奴はいない。抱きしめて可愛がってやりたくなるのが恋人だろ?
物理的に無理だからって声を聞くだけでも癒される。
隼人は控えめにいじらしく可愛い事をいう。堪らないんだよ、まったく。
…今日は午後から外回りの直帰だったな…
スケジュールを頭の中で確認し、保育園を出ると美陽に電話をかける。
「おーおはよ。今日の迎え、頼んでもいいか?」
理由を聞きたがる美陽に手短に言う。
「隼人が熱で休んでるんだ。看病したいから頼む」
「わかったわ。ゆっくりしてらっしゃい。美紅はうちに泊めるから」
物分かりのいい嫁でよかった。まあ、嫁の役割は果たしてないけどな。
午前中の仕事をサクサクと片付け、ランチも兼ねて外回りに出る。取引先での仕事も淡々とこなし急いで隼人の家に向かう為タクシーに飛び乗った。
近所のコンビニで色々と買いこみ、マンションのインターフォンを押した。
だが、返事はない。ドアノブを引けば簡単に開いた。
…不用心だな…可愛い隼人が襲われたらどうするんだよ…
隼人が閉め忘れたドアを開いていたドアの所為にしてボヤく。ちゃんと守ってくれよ…俺の隼人を。
と、ドアに念を押すくらい俺は隼人が大切で愛おしい。
静まりかえった廊下を渡り、部屋へと繋がるドアを開けた。壁際にあるベッドがこんもりしている。
それだけで息を止めていたかのように溜息を吐く。
ベッドのそばに寄り、眠っている隼人の額に手を当てた。
ピクンと揺れる身体。そしてゆっくりと目を開け俺を映す。
「…高嶺さん?」
「熱高いな…いつから出てたんだ?」
「…昨日…声聞きたかったから…言わなくてごめんなさい…」
謝ることなんてない。俺を欲しがって声だけでも聞きたいと言ってるんだってわかってる。
「何かしてほしいこと、あるか?何か食べれそうか?」
布団の隙間から細い腕を覗かせる。誘われるように取ってやると熱い手でにぎりしめてくる。
「手を繋いでてほしいです…熱が出ると寂しくて心細くて…ここにいてくれたら嬉しいです…」
辛そうに俺を求めてくる隼人はもう一人じゃない。寂しくて心細い時はいつだって俺がそばにいる。
「いるよ。ずっとそばにいる。安心して休んでいいよ。隼人が元気になるまでそばにいるから」
ゆっくり閉じた瞳が開いたと同時にこめかみに溢れる雫。
「嬉しいです…高嶺さん…大好きです…」
もう手なんかじゃ堪らなくて布団ごと抱きしめる。
流れる涙に何度もキスを落として、寝息が聞こえるまで抱きしめていた。
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吹雪
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