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水色の章3
「――白百合さま」
織と鈴懸が去って行くと、詠が白百合におずおずと話しかける。詠は、白百合から「呉須の池」について全て知らされていた。そのため織のことを大層心配していたのだが……今の話を聞いて、気になることができたらしい。
「鈴懸さまは、力を取り戻しているのでしょうか。それなら、私ももっと安心して織さまを送り出せるのですが……」
「鈴懸か? ああ、前よりもだいぶな」
「……それは、どうしてですか?」
鈴懸が力を失っているのは、信仰する人間がいなくなってしまったから――それは、詠も聞いていた。そんな鈴懸が力を取り戻してきているのは、なぜだろう。今更彼の神社に誰かが訪れて、鈴懸に祈ったとは考えづらい。
「奴のことを信じ始めている人間が、いるじゃないか。たった一人の人間でも強く奴のことを想ったなら、奴の力は再び戻ってくる。彼との関係がもう少し良くなれば、奴も昔の力を取り戻せると思うぞ」
「えっ……その人間って」
詠がはっとした顔をすれば、白百合はにたりと笑う。
もう少し、鈴懸の力が戻ったら、鈴懸の姿を見ることができるだろうか。詠はそう思って、少し楽しみになった。
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