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   ****    クロがパーティーに加わってから、俺の日常は百八十度変わった。 「はぁ、楽ちんだぁ……」  クロの背に乗り揺られながら俺は溜め息を漏らした。  今までは重い荷物を背負って地獄のような道のりを歩んできたが、クロが来てからはそれが一転した。 「いいなぁ、ソウシ。僕も乗りたい~」  後ろに続くチェルノが羨ましそうに唇を尖らせた。 「ごめんな、乗せてあげれたらいいんだけど」  一度アーロンが「俺も乗せろ!」と近付いてきたことがあるのだが、後ろ足で見事に蹴り飛ばされてしまったのだ。  それからもアーロンは何度も乗ろうと試みたが、その度に反撃を受けて傷を増やしていった。  どうやら俺以外の人間は乗せたくないらしい。歩いているみんなには申し訳ないけど、少し気分がいいのは否めない。 「チェルノ、よかったら僕が四つん這いになるからその上に――」 「気色悪い発想口にしてんじゃねぇぞこのクソゴミ野郎。一生二足歩行できなくしてやろうか」  若干息を荒くして変態的な提案をしてきたジェラルドに、チェルノがこれでもかというほどの強い侮蔑を吐き捨てた。  ひ、ひぇ……、か、顔が恐ろしいことに……!  しかしジェラルドの意に介した様子はなく、 「ふふふ、僕が歩けなくなったら一生チェルノに面倒を見てもらえるね」  うっとりと微笑むジェラルド。なぜここまで恐ろしいことを言われてもなおそう思えるのか……。  ジェラルドのポジティブシンキングには時々狂気を感じる。  こういう時の二人には関わらないのが一番だ。話題を変えるように俺はクロに話し掛けた。   「クロ、重い時はいつでも言っていいからな。その時はちゃんと降りるから」 「わふっ」  元気よく答えるクロだが、一度も道の途中で俺を降ろしたことはない。  しかもどんなに進んでも疲れた様子を微塵も見せないから本当にすごい体力だ。  正直なところ思った以上に長引いている旅に足腰が限界に達していたので本当にクロには感謝してもしきれない。 「おい、お前飼い主だろ! 俺を乗せられるようにちゃんと躾けろ!」  最後尾を歩くアーロンが負け犬の遠吠えのように怒鳴り散らす。  今までの俺への言動を考えてよくそんなことが言えたもんだ……。  奴の天井知らずの厚かましさには感心する。 「クロ、アーロンが乗せろってー」 「グルルルル……ッ」  低く唸って完全なる拒絶を見せるクロ。相当嫌らしい。  クロは俺以外に懐かず、特にアーロンには初対面の悪印象が定着しているのかその塩対応っぷりはすごい。正直、少しいい気味だ。   「残念だな。クロは絶対嫌だって」 「全然残念って顔じゃねえ! なんだそのにやけ面! 犬がだめなら飼い主のテメェを躾けてやるっ」 「やれるもんならやってみな。クロがちゃんと守ってくれるもんなー」 「わふっ」  任せろとでも言うような心強い声で吠えるクロは本当に頼もしい味方だ。 「クソっ、絶対今度犯してやる……!」  不穏な宣言をしてギリギリと歯噛みするアーロンだが、クロがいるおかげで少しも怖くなかった。

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