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第17話 男の性です、仕方ない

**** その後、どうにか媚薬をしぼり集めたアーロンは糸が切れたようにそのまま倒れてしまい、俺たちはやむなくそこにテントを貼って一晩過ごすことにした。 テントは小さなもので、それぞれ一人ずつ自分用のものがある。 もちろん俺の分はない。 クズは当然一歩たりともテントに入れさせようとしないし、チェルノと寝るのはジェラルドの目が怖いし、頼みのドゥーガルドはなぜか頑なにテントに人を入れることを拒む。 そんなわけで、凍えるほど寒くもないので俺はいつも布にくるまって外に寝ている。 その晩は静かだった。 アーロンもドゥーガルドも戦いの疲れのせいか、もしくは媚薬のせいかテントの中で寝ていたし、チェルノは依然として繭の中から出てこなかった。 ジェラルドはその隣で不気味なくらい恍惚とした笑みを湛えて横になっていてとてもじゃないが会話をしたいとは思えない。 俺はとりあえず適当に鞄から食料をとって食べ、ごろりと横になった。 星が瞬く夜空を見上げながら、俺は大きく息をついた。 今日はいろいろとあったなぁ……。 ドゥーガルドとはあまり話したことがなかったけど、今日の一件で少し打ち解けられた気がする。 子豚扱いは心外だけど……。 ガサ……―― 突然、ドゥーガルドのテントの方から音がして、俺は体を起こした。 その後はなにも物音がしなくなったので単に寝返りを打っただけなのかもしれない。 そこで、俺はそういえばドゥーガルドたちが何も食べていないことに気づいた。 一応、川の水を汲んで空瓶に入れ枕元にそれぞれのテントに置いているが、食べ物は置いていない。 苦しそうに肩で息をしていたので、食事どころではないと思ったが、時間もたったし、もしかしたらお腹もすいてきてるかもしれない。 俺は布を川の水で濡らして絞ると、鞄の中から干し肉とパンを取り出し、それらを持ってドゥーガルドのテントの入り口の布をめくった。 「ドゥーガルド、大丈夫か?」 「……ん」 ランタンをかざしてテントの中を照らすと、ドゥーガルドがもぞもぞと体を起こした。 眠気まなこが俺の姿をとらえた途端、こっちが驚くくらい見開いた。 そして慌てて何かを自分が被っている布の中に隠した。 「え、なに、どうした?」 「……い、いや、なんでもない」 そう言いながらもそのらしくない慌てぶりはどう見てもなんでもなくない。 まぁ、詮索するのもよくないから、何にもないことにしよう。 「ならいいんだけど、よかったらなんか食べる? 一応、干し肉とパン持ってきた。あと、もしまだ体が熱かったらこれ額に置いてみて。濡れた布。これけっこう気持ちいいから」 枕元に置いてあとは好きに使ってもらおうとテントの中へ入っていった。 だが、たわんでいた布に足がひっかかりそのままドゥーガルドの上に倒れてしまった。 「うわ、ごめ……っ!?」 慌てて立ち上がろうとした俺の手に何かが当たった。 俺が手をついたのはドゥーガルドの下半身部分。 布越しだが、その感触には男であれば誰でも憶えがある。 「え? あ、もしかし勃って……」 動揺のあまり言い掛けた無神経な言葉を俺は慌てて飲み込んだ。 や、やべぇ、とんでもねぇことを言うところだった……! 男同士でも下半身事情を知られるのは恥ずかしいことだ。 ここは何も気づいていない振りして去るのが思いやりというものだ。 「……あ、えっと、じゃあここに置いとくから好きな時に食べて。それじゃあお大事に……」 「待ってくれ!」 ドゥーガルドが俺の腕を掴んだ。 こちらを見上げる目は縋るような必死さがあった。

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