4 / 32
第4話
「いい加減、機嫌直してください」
イッた直後は解放感から放心状態になっていた優弥だったが、その身体を綺麗にし終わったころには、ふて腐れていた。
鍵のことで嘘をついたのを根に持っているらしい。
すでに昼休みになっているというのに、千歳は女王様の許しが貰えず謝り続けている。
「本当にごめんなさい! 反省してます!」
「……しないだろうな?」
「……え?」
もう何度目になるかわからない千歳の謝罪の後、ボソッと優弥から言葉が返ってきた。
「もう、あんな嘘はつかないかって聞いてんだよ!」
何も答えずにいた千歳に焦れたのか、優弥が大声を出す。
それに慌てて千歳も言葉を出した。
「つきません!……許してくれるの?」
下げていた頭をあげて千歳が聞くと、優弥はため息を吐いてから答えた。
「今度同じことしたら、絶対に許さないからな」
口をきいてくれたということは、ほぼ許しがでたということだろう。このチャンスを逃すわけにはいかない。
「わかっています……はい、お詫び」
素直に答えて千歳は、来る時に買ってきたミルクティーを優弥に渡した。
人肌ほどの温度になったそれなら、散々声をあげた優弥の喉にも辛くないだろう。
「……しょうがないから、貰っといてやるよ」
口ではそう言いながらも、優弥はどこか嬉しそうだ。
(本当にミルクティー、好きなんだな)
缶のミルクティーを両手で持って飲んでいる優弥に女王様の面影は見えない。
(この深海を……自分だけのものに出来たなら……)
「深海……」
「ん?」
振り返った優弥の肩を掴み、千歳はその唇にキスをした。
もっと抵抗されるかと思ったが、意外とおとなしく優弥はキスに応えてくれた。
ミルクティーの味がするキスを終えると、優弥は顔を赤く染めて怒った。
「いきなり何すんだ!」
(……深海。何でそんな女王様らしくない表情を俺に見せるんだよ。お前が俺をそばに置くのは、身体の相性がいいからなんだろ?)
優弥が本当に変わってしまったなら、完全に遊びだと割り切れるのに、時おり見せる昔の純な面影が千歳を苦しめる。
「……もう少しでいいから」
千歳はそう言って、優弥を腕の中に抱き締めてその肩へと顔を埋めた。
「高瀬……?」
「このままで、いさせて」
小さく呟いた千歳の言葉に、優弥は力を抜いてその身体を千歳に預けた。
(お前にとって俺は、大勢いる中の一人でしかないってわかっているけど……)
もう少しの間……
下僕でいさせて下さい。
ともだちにシェアしよう!