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エピローグ

レストランのレジに、眼光鋭い招き猫と創立者である彼のご両親の写真が飾られている中、厨房ではいい香りが漂っている。 今日のランチは、ビーフシチューで間違いないだろう。 厨房を覗いてメニューを見ると、ケーキはチョコとモンブランの二種類だ。 スープはコーンクリームとオニオンかあ。悩むなあ。 「何してんすか、涼さん」 二階から下りてきた朝登くんが、俺の頭をわしわしと掻きだした。 「な、こっちのセリフだよ。せっかくセットした髪を触らないでよ」 「……九割の生徒が女の子の学校で、何を色気づいてんだか」 面白くなさそうな顔の朝登くんが可愛くて、抱き着いてしまう。 「大丈夫だって。女の子って言っても美穂ちゃんや華ちゃんたちだよ」 「それでも心配」 「俺はこの年齢で浮かないか心配で、髪だけは若くしてみたかったのに」 朝登くんが入学祝にスーツを買ってくれたので、なんだか馬子にも衣裳みたいな、似合うのか分からないスーツ姿にセットした髪。 二駅なので自転車で通うつもりだけど、今日は華ちゃんたちと待ち合わせして一緒に行くことにした。 今日、四月×日は、藤森製菓専門学校製菓コースの入学式だ。 普段は私服でいいらしいけど今日だけはスーツ。 似合ってなさそうでドキドキしてしまう。 「今日は、ランチから入るの? 女子高生とランチしてきていいんだけど」 俺のネクタイを引き寄せると、整えているのか単にキスしたいのか分からない動きに動揺する。 彼は見てくる目だけでもなんだかエッチなんだよなあ。 「いや、美穂ちゃんたちがここで入学祝するっていうから俺も手伝うよ」 「じゃあ、涼さんも座ってて――俺が作るから」 ひい。キスしてるだけなのに、下半身が反応しそう。 昨日だって散々したのにい。 「涼くーん」 「涼さん」 「あわわ、二人が来た! じゃあね」 このままだといつまでもキスしてしまいそうなので慌てて離れた。 もう店の入り口に、二人が立っている。 専門学校デビューの二人は茶髪になっていて、可愛い。 「……っち。色気ついて化粧しやがって」 「常連さんにまで妬かないでよ」 不器用ながらも、不安や不満を口に言うようになった朝登くん。 それが今は俺限定なのが愛しい。 「まあいい。いってらっしゃいのキス」 「もー」 二人を待たせているので、触れるだけの簡単なキスをして離れた。 「舌!」 「いれるわけないでしょ」 朝からなんでディープなキスをしなくちゃいけないの。 なんて思いつつも本気でやきもち妬いている彼に、背伸びして頭を撫でた。 「また、夜にね」 イイ子イイ子と撫でると、面白くなさそうだった彼も吹き出す。 「じゃあ、イイ子で待ってる」 「うん」 「いい子に待ってるから、乗っかってアンアン言ってね」 「馬鹿―!」 朝からそんな下品な言葉が出るなら大丈夫だね、とあきれつつ真っ赤になった頬をパタパタ仰ぎながら二人の元へ走った。 早く帰って、いっぱいキスの続きをしてあげなくちゃね。 Fin

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