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第88話 祥一side
彼と出会ったのは幼稚園の時だった。
同い年なのに周りと比べると背も高く大人っぽかった彼はみんなの憧れだった。
運動会もマラソン大会もいつも一番。お遊戯会でも真ん中だし劇は主役。
そんな彼は一人でいることなんてなくていつもみんなに囲まれてた
元々人見知りな性格の俺はその輪の中に入れなくて一人で絵本を読んでいた
そんな俺に声を掛けてくれたのはきっと彼の気紛れ。
「祥一」
「なぁに?陽平くん」
「何読んでるの?」
「これ?幸福の王子」
「何それ?どんな話し?」
この絵本は他のと比べるとこの園では人気がない
おそらく話がそこまで明るいものじゃないからかもしれない
俺はこのつばめが好きだった。涙を流す王子の手助けをする。自分のことより王子の願いを叶えるため街の人のために弱っていく体にむち打ち飛んで幸せを届けた。
最後は王子と共に天に誘われたつばめ。そして幸せに暮らしたと言うお話
誰かのために命を落とせるほどの思いを持ち生きていける人になりたい。誰かのために泣けるような人になりたい
死にたくはないけれど…
「陽平くんはこの王子さまみたい。みんなに大切なものをあげられるんだから」
「え?俺は自分の皮膚とか剥がしたくないし目だってくりぬかれたくないよ」
「違う違う。みんなを思って優しくできるところが似てるって言ってるの」
「ん~わかんない」
「ふふっ…」
それからは何かと気にかけてくれて一緒にいてくれるようになった。
彼を将来愛する日が来るなんてこの頃は微塵も思ってなかった
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