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また会おう

桜が舞っている。 カーテンがふわりとなびき、それと同時にまだ肌寒い風が教室に吹き込んできた。 「…せんぱい」 教室のドアに目を向けると目を赤くした後輩が立っていた。 フラフラと近づき、俺の胸の中に飛び込んできた。 「飛鳥(あすか)」 「せんぱい…卒業したらやだ…」 背中に回された腕に更に力が入り、少し息が詰まった。 そう、俺は今日3年間通った高校を卒業するのだ。 「…無茶言うなよ」 再びカーテンが揺れ、風に乗って桜の花びらが教室に吹き込んだ。 「でも…先輩」 県外の大学に行っちゃうんでしょ?と続けられた声は小さくて悲しく、そして苦しそうに俺の耳に届いた。 それに応えるようにまた小さく答えた。 「県外って言ってもここから行けない距離じゃない」 「…毎日会いたい」 胸に埋めた顔を上げて見つめてきた飛鳥に微笑んで頬に唇を寄せた。 「毎日電話するから」 「やだ」 駄々をこねるように首を振る飛鳥を宥めるように小さくキスを落とし、そのまま唇に自分の唇を押し付け、強請るように唇を少し開いたので、そのまま舌を入れお互いを離さないように強く抱きしめあった。 「せんぱっ、は、」 「…飛鳥」 ゆっくり唇を離すとうっとりとした飛鳥が目に入り、やりすぎたと少し後悔した。 「ぼく、一年我慢する」 「…ああ」 俯いて、手をとって握りしめる飛鳥はしぶしぶといった表情で呟いた。 「でも休みの日は会いたい」 「…ああ」 次に俺の顔を見たときは少しスッキリしたような飛鳥の顔にホッとした。 そして小さなお願いに俺は内心苦笑しながら次々に出てくる”お願い”に「ああ」と答えた。 少し遅くなり校舎を出ると、あまり人がいなくなっていたので飛鳥と指を絡めた。 「っ!先輩!ここ外っ」 「大丈夫大丈夫」 少し笑いながら言うと、「もう」と少し頬を膨らませた。 満更でもないようだ。 しばらく歩くと校門に差し掛かり、飛鳥に目を向けると丁度飛鳥も俺の目を真っ直ぐに見た。 またふわりと風が吹いて桜が舞っていた。 「一年後、また会おう」 「毎週会いに行くもん」 そう言われて少しだけ微笑みあって俺たちはお互いの家に帰るために一歩を踏み出した。

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