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セクサロイド

 最近の機械は人間の行動パターンを読み取り、記憶し、最新のAI技術により持ち主に適したピンポイントの補佐ができるようになった。  初期の頃は車や家電で実用化されていたその機能は、やがて介護ロボットなどにも搭載され、その流れの延長線上でセクサロイドも生み出された。  セクサロイドとは、セックス機能を搭載されたロボットのことである。  しなやかな骨格と長い手足、魅力的な容姿で作られたセクサロイドは、アングラな存在でありながらひそかに人気が高く、インターネット上で売買されるのが主流だった。  男性型と女性型があり、男性型の中にはタチとネコが存在する。ようするに攻タイプと受タイプだ。それぞれ搭載されている機能が違う。攻タイプは絶倫で、受タイプは妖艶にできている。  ハルキはスマートフォンの画面をにらみ、激しく葛藤していた。  表示されている画面は、セクサロイドを販売しているサイト。  購入したいが、価格を見ると断念しそうになる。奮発するか、やめておくか。悩みに悩んだハルキは、ギュッと目をつむって、人差し指で購入ボタンを押した。  はあーっと深く息を吐く。額に冷や汗が浮いている。ハルキは袖で汗を拭った。 「……買っちゃった……」  心臓がバクバクしていた。高い買い物にドキドキが止まらない。  届くのはあさってだ。その時のことを想像して、ハルキはニヤニヤとした。頭の中は卑猥なことでいっぱいだ。  大学が夏休みというこのタイミングをずっと狙っていた。必死でバイトして貯めた金で、ようやく買った高い買い物がこれというのはバカすぎるだろうか。でも、どうしても欲しかったのだから仕方がない。  セクサロイドは人間と変わらない柔らかさだと聞いた。おっぱいの大きさを想像して、ハルキはまたもやニヤける。まだ童貞のハルキにとって、その世界はまだ未知のもので、めくるめく魅惑さを想像しては、めまいで溺れそうになる。  これまでも彼女がいなかったわけではない。どちらかと言うと、容姿が整っているハルキはモテる側のほうだった。だが、何がどううまくいかなかったのか、悲しいことに大学生になった今も童貞のままだ。  ピンポーン。呼び鈴が鳴った。  スマートフォンで基本無料のゲームを楽しんでいる最中だった。ハルキは慌ててゲームを中断して、玄関へと向かった。 「宅配便でーす」  男性の声がした。  セキュリティとは無縁の安いアパートには、マンションのようなエントランスというものは存在していない。宅配便の業者はいきなり玄関前に立つのである。  ガチャ、とドアを開けたハルキの前に、大きな荷物があった。ここは二階の一番奥なので、階段と狭い通路しかない場所で運ぶのは大変だったろう。  捺印を押して荷物を受け取った。長方形で、でかかった。しかも重い。 「あれ?」  ハルキは違和感を覚えた。妙にでかい。思っていたよりもでかい。 「あれ? おかしいな」  ハルキが注文したセクサロイドは、小柄の女性のはずだった。購入ボタンを押す際に、ギュッと目をつむったのがまずかったのだろうか。もしかしたら違うものを購入してしまったのだろうか。高い買い物だったのに、そんな間違いをするだろうか。  ハルキは動揺でバクバクと弾み出す心臓を持て余しながら、慌てて荷を解いた。  そこにあったのは小柄な女性ではなかった。背の高い男だった。 「あー……やっちまった」  ハルキは床に沈み込みそうなほど、がっくりとうなだれた。返品しなければ。交換してもらわなければ。  そう思う反面で、ちらっと男性型セクサロイドを見た。  どうなっているのだろう。ちょっと興味が湧いた。 「ちょっと、見るだけ」  返品するなら箱から開けないほうがいい。頭ではわかっているのだが、好奇心を抑えられなかった。  箱から人間サイズのセクサロイドを取り出し、そっと股間を確認する。 「うーわっ」  大きかった。  セクサロイドは人肌と聞いていたが、目の前で横たわる男性型セクサロイドはまだ冷たかった。半裸だが、パンツははいている。 「充電するんだっけ、電源入れるんだっけ」  取扱説明書をガサガサといじっていたら、すぐ傍でウィーンと音がした。 「えっ?」  振り返ると、勝手に起動していた。まさか、股間を触ったせいなのだろうか。動揺していると、セクサロイドがハルキを見た。ピンポイントで見た。 「あ」 「おはよう、ハルキ」  喋った。しかも教えた覚えのない名前まで知っている。  慌てて取扱説明書と一緒に入っていた紙を見ると、店のサービスで購入者の名前をあらかじめ登録していると書いてある。購入する際に住所と名前を記入しているから、それを元に登録したのだろう。  スッと肩に手を置かれた。ハルキがぎくりと震えた。 「あ、いや、ちょっと待て、俺にそのつもりは」  押し倒された。さらに組み敷かれる。  真上から優しく見下された。 「やろう」 「えっ、ちょっ、いや、待てっ」  やや乱暴にズボンと下着を奪われた。着ていたシャツも奪われる。 「いや、待て、性急すぎるだろ、強引すぎだろ」  ハルキが慌てるのにも構わず、上からのしかかってきた。重い。 「ひゃっ……」  いきなり乳首を舐められた。びくんとハルキがしなる。 「やっ、ちょっ、待……っ」  セクサロイドの左手が、ハルキの股間をつかんだ。遠慮なく根本からしごかれる。 「やぁっ、やだっ、やだってばっ!」  ハルキはじたばたともがくが、セクサロイドの腕の力は強かった。逃れられない。 「イヤイヤ言ってても、身体のほうはそんなことないみたいだぞ」  わかったようなことをセクサロイドが言う。いや本当に嫌なのだ。ハルキはぶんぶんと左右に首を振った。  だが、股間のものが、みるみる膨らみ、力を持ち始める。ハルキは焦った。これではまるで感じているみたいじゃないか。  セクサロイドが下へとさがり、べろんとハルキのものを舐めた。びくんと全身が跳ねる。巧みにしごき、揉み込みながら、舌先で愛撫される。ハルキは未知の感覚に目を見開きながら、どうすることもできずにいた。  セクサロイドがハルキのものを口に含む。頬をすぼめ、唾液を絡ませながら、上下にしごきはじめた。びくびくとハルキの身体が小さく跳ねる。 「あ、あ、あ、あ、だめっ……やっ、やああっ……」  あっという間に達してしまった。どくどくと溢れる白濁を、セクサロイドが舐めとっている。セックス専門として作られたロボットは、人間の体液をうまく吸収し、体内で分解するようになっていた。逆に、体液を製造して人間の身体に注ぎ込むことも可能だ。  ぐったりとするハルキを、セクサロイドはまだ許してくれそうになかった。白い足を左右に開かせ、その股間に顔を埋めた。達したばかりで萎えているものではなく、そのさらに下、尻の窄まりのほうにである。 「んくっ……」  小さな孔を舌先が攻めてきた。 「あっ、あっ、だめっ、やだ、そこだめ……っ」  力なく嫌がってみても、セクサロイドは聞いてはくれない。  小さな孔をこじ開けるように、唾液で濡れた舌先が入ってくる。襞を舐められ、ハルキはびくびくと震えることしかできなかった。 「あっ、あんっ、あっ」 「太ももが熱いよハルキ。感じてるね?」  指摘されてさらに熱くなった。すでに頭が変になりそうだ。  さんざん舌先で舐められた場所に、今度は指が入ってきた。ゴツゴツとした指先が、襞をかき分けるようにして中に押し込まれてくる。粘膜を撫でられた。内壁を辿るように奥へと押し込まれていく。 「ふっ、くっ」  ハルキはびくんと喉をそらした。セクサロイドの指先がピンポイントに前立腺を撫でてきたのだ。 「あっ、やだっ、だめっ、そこやだっ」  うわごとのように嫌がりながら、ハルキは快感へと落ちていく。 「だめ、いくっ、出るっ、だめっ、あっ、あああああああああああっ……」  がくんと身体が跳ねた。同時に白濁を撒き散らしていた。 「……ああっ……やだっ……気持ちいい……」  全身がガクガクと震えて力が入らない。うまく喋ることもできず、舌足らずになる。  目の端には涙の粒が浮かび、半開きの口は絶えず浅く苦しい呼吸を繰り返し、小刻みに震える身体を自分で制御することもできない。  再びセクサロイドの指が、小さな孔を攻めてきた。大きなものを飲み込ませるのが目的なのか、筋肉をほぐすような動きをみせてくる。ゆっくりと丹念に時間をかけて、指を一本から二本、二本から三本へと増やしてくる。その間、ハルキははあはあと浅い呼吸を繰り返すばかりで、抵抗することもできなくなっていた。  ぐいっと両足を持ち上げられた。視線を向けると、セクサロイドの腰が足の間に割り込んできていた。その腰の中心には、猛々しいものがまるで凶器のようにそびえ立ち、ハルキは内心で、殺される、と思った。彼はいつパンツを脱いだのだろう。そんなことも同時に思った。 「あっ……」  先端をあてがわれたのがわかった。まるでローションを塗りたくったかのように、セクサロイドの一物は濡れていた。傷つけないための配慮がなされているのだろうか。 「んっ……」  入ってきた。ずるずると内壁と滑り、奥へと進んでくる。大きなものを飲み込まされて、苦しかった。塞がれたのは喉ではないのに、喉を塞がれたような気分になった。  尻に股間がぶつかる。根本まで押し込まれたらしい。セクサロイドのくせに、体内のものはやけに熱い。ドクドクと脈打っている。どこまでリアルに再現するのだろう。 「全部入ったよハルキ」  名前を呼ばれると変な感じがした。くすぐたったいような照れくさいような変な感じ。 「すごく熱い……」  吐息混じりにセクサロイドがつぶやく。妙に心臓に悪い声だった。変な気分になる。ハルキは体内にセクサロイドの存在を感じながら、このまま自分はどうなってしまうのだろうと思った。  セクサロイドの腰が動いた。引き抜かれた瞬間、思わず声が出る。 「んっ」  抜け切らないうちにまた入ってきた。世の女はみんなこんな気分なのだろうか。ハルキはぼんやりとそんなことを思った。まだ童貞なのに、先にヴァージンを奪われることになるなんて、夢にも思っていなかった。  セクサロイドの腰は情熱的だった。ハルキは両腕を床に投げ出し、もはやされるがままになっていた。体内を好き勝手に出入りしているセクサロイドの先端は、ハルキの感じやすい場所ばかりを狙ったように突いてくる。  頭の中はぼうっとし、何度もめまいに襲われた。朦朧とする意識の中で、研ぎ澄まされたように快感だけが浮き彫りにされている。喉からは切ない喘ぎが漏れ、目尻には涙が浮かぶ。  セクサロイドはロボットのくせに、まるで人間のようにはあはあと荒い息をこぼし、額に汗をにじませ、潤んだ瞳でハルキを見つめながら、腰を突いてくる。こうして見つめ合っていると、彼が驚くほど美形なことに気づいた。  そのように作られているのだから当たり前なのだが、スタイルもいい、筋肉のバランスもいい、すべてが完璧だ。声もとてもいい。  ハルキは自分が狂わされていくのを感じていた。どこか違う世界へと強引に連れて行かれている。知らなかった世界へと引きずりこまれている。 「あっ、あぁっ、も、だめ、いく……っ」  限界が近づいてきて、全身が震える。頭の中が真っ白になる。  性器と化した尻の窄まりがひくひくと収縮している。セクサロイドを強く締め付けていた。 「ハルキ、俺もいきそうだ。一緒にいくか?」  セクサロイドからそう問いかけられ、ハルキはこくこくと頷いた。  腰を叩きつけてくる速度が増してきた。ハルキはのけぞる。 「あっ、あっ、あっ、あっ、も、いく……あぁっ、ああああああ……っ」  ドクンッと吐精した。ハルキの腹や胸が白濁で汚れる。 「うっ……くっ……」  セクサロイドが吐精した。ハルキの体内に熱いほとばしりが注ぎ込まれる。  少し時間を置いてから、セクサロイドがゆっくりと引き抜いた。ハルキはその場にぐったりと沈み込み、はぁはぁと苦しい呼吸を繰り返す。 「素質あるね」  セクサロイドがにっこりと笑った。 「今後はハルキの癖や特徴をもっと吸収し、感じやすいポイントすべてを把握できるように精進するから、覚悟しとけよ?」 「……えっ……」  すでに死にそうなのに、これ以上感じたら本当に死んでしまう。  ハルキはぞくぞくと恐怖で震えた。同時に甘美な毒にとらわれたような、妙な気持ちにもなった。  期待と絶望の両方が、ハルキの体内に宿る。 「じゃあ、もう一戦交えようか」  セクサロイドがニヤリと笑った。瞬時にハルキが慌てる。 「えっ、ムリムリムリムリ、やだ、待って……待っ……」  ハルキの唇が塞がれた。思いがけない濃厚なキスに、頭がくらくらする。 「永遠にかわいがってやるよ、ハルキ」  この甘美な毒から逃れることは、一生できないような気がした。 END

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