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牡丹は蝶の翅のかほりに-22

「あれぇ、仕事中にストールなんて巻いてどーした?」 遅刻してきたセクハラ上司が朝の挨拶も疎かに嬉々として問いかけてくる。 シンジはパソコン画面と向かい合ったまま回答した。 「昨日、首にタトゥーをいれたので」 「……まじ?」 シンジは思わずその場で固まった上司につい吹き出した。 「冗談ですよ」 「……あ、そう」 蝶のタトゥーは無理だけど。 君から刻まれる痕跡ならいくらだって甘んじるよ、黒埼君? 「兄貴ぃ、悪ぃ、今日休むわ」 カーテンが引きっぱなしのワンルーム、ベッドに寝転がった六華は兄に欠勤の連絡を入れる。 「んー……? 俺の声、嗄れてる? 昨日まぁ飲んだし、しんちゃんが一晩中……あ、そういや、兄貴、覚えてる? 俺がガキの頃、どっかの田舎に連れてってくれただろ? あの山ってどこだっけ? 今度、しんちゃんと行きてぇと思ってさぁ……」 俺の好きな匂い。 それは俺を好きになってくれた奴の匂い。

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