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第一話

君が居れば何も要らない。だなんて思っていた頃があったのを俺は忘れていない。 隣にいつでもいた君が目の前で通り魔に刺されてしまった事も忘れることはないだろう。 いや、君を忘れてしまわないことが俺の目の前で死んだ、いや殺されたのを助けられなかった事を悔やみ続ける事が俺にとって十字架のようで戒めなのだから。 何回自分で死のうとしたか、何回後悔したか。 何回君のもとに逝こうとしたんだろう。 でも、死のうとするといつもできなかった。 多分だけれど助けてくれてて、自殺するのを阻止してくれてたんだよね。 ありがとう。 そしてその頃から俺は復讐してもいいんじゃないかって…。もちろん心のなかでは「そんなこと自分だって報われないし、君もそんな事は願っていないはずだって。」 そう、必死に問い聞かせてた。 君を殺した通り魔が逮捕されたのは2ヶ月後くらいだったかな。人を殺すことで快楽を覚える快楽殺人者で、他にも通り魔をしていたらしい。そこで死刑にでもなればこんな想いなんて思うこともなかった。 でも、判決は精神異常によるものと意味がわからない事で少しも影響がなかったみたいだった。いっそ死んでくれればどんなに喜ばしいことだったか。そして俺が復讐心に燃えることもなかったはずだから。 最初から復讐したいって思っていたわけじゃなくてこの出来事がひとつのきっかけだった。 そして俺が狂ってしまったことにつながる。 少しでも立ち直れていたら、壊れない位の心を持ってたら変われたのかな。今となっては何がきっかけだったのか、何もかも忘れてしまったけれど何よりも君が大切すぎた。 人を傷つけても何も生まれないっていうことも、何よりも君が好きなんだっていうことも、生涯愛したいって思ったのも、隣にいるだけで、あたたかい人も君だけなんだって。知ってしまった分胸が痛むのはしょうがないことだよな。 でも、なんで俺じゃなくて君が死んだのだろう。と頭の中を駆け巡って振り出しに戻る。 自分にそんな事しても戻ってこない事すらわかっていたけど、あの日確かに隣にいた君が喋ってくれないかななんて願ってしまっていたんだ。君が生きていた頃に戻ってほしいなんて願ってしまうことは、決して罪じゃないって。 君が愛しかったからこそ、罪を犯した。 何も生まれないことすら分かっていたけれど、すがり付きたかった。君が居ないと俺はダメみたいだから。 過去に戻れたんならどんなにいいだろう。 君と笑い合えた日々が戻るならどんなに嬉しい事なんだろう。何回も何回も何回も思ってしまっていた。 でもそれが辛くて苦しくて自殺してしまいたくなる衝動に駆られて、君の声が聞こえる。 「助けて。」って、でも助けられなかった。 ずっとずっとずっとずっと聞こえて何も手に付かなかった。 生きるのが怖くて、思い出してしまうのが怖くて怖くて仕方がなくてその想いに蓋をしていてだから復讐をしようと思った日はある意味運命の日だったんだろう。 最初は、少しでも君が報われるならと思って始めた事だった。 結果として足を踏み外す事になって、大きく人生が変わってしまうことにもなったけど、後悔はしていないし、俺の想いが晴れたのならいいかなって思ったりもしていた。

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