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臆病者は二度嘘をつく
2018/04/01参加
お題
・エイプリルフール
・予感
・「俺は悪くない」
58分
「先輩!ずっと好きでした、俺と付き合ってください!!」
高校入学以来想いを寄せている先輩に、告白するならこの日だと、俺は随分前から決めていた。
先輩はノンケで、彼女がいた頃もあった。だからフラれる予感しかしない。だけど、今日なら、気まずくならずに誤魔化せるだろうと思っての事だ。
今日は四月一日、エイプリルフール。
焼却炉と駐輪場の間の、人目につきにくい通路へ先輩を呼び出し、俺は計画を実行することにしたのだ。
先輩の口から出たのは…
「嬉しい!俺もだよ」
え?今なんて…
「先輩も、俺のこと…?」
信じられないと呟いて呆然としていたら、先輩が笑い出した。
「バーカ。エイプリルフールだからってタチの悪い冗談言いやがって。OKされた時のリアクションぐらい考えとけよ」
…え。
つまり、エイプリルフールにエイプリルフールで返したってこと?
ていうか、こっちは嘘じゃなかったのにな。
こんな日にしか告白する勇気のない自分が悪いのか?
「いや、あの、先輩、俺は…マジです」
「キモいわ」
間髪入れず返って来た言葉。
ああ、そうだよな。
こっちが正しいリアクションだよな。
だけどこれじゃ、何のために今日告白したかわかんないな。わざわざ自分でネタバレしちゃって。
キッパリ振ってくれてありがとう、もう諦めます…
「キモい用で呼び出してすみませんでした」
頭を下げると、先輩に背を向けて歩きだした。わかってはいたけれど、実際に言われてみるとやっぱり凹むなあ。
あ、涙こぼれそ。
「待てよ」
先輩が、俺の腕を掴んだ。離してよ、キモいんでしょ。
「ほんとに本気なのか?」
そう言われたので、くるりと振り返ってやった。
「…」
俺の大粒の涙を目の前にして、先輩は言葉を失っているようだ。
「…ごめん」
あまりにもキツい言い方だったこと、謝ってるのかな。掴んでいる腕の力が強くなった気がした。
「真面目に答えて、エイプリルフールでしたー、なんて言われたら立ち直れないから、試した」
…えっ。
「…気になってたんだよ、お前のこと。彼女と別れたのもそれが原因だよ、責任とれ」
えええ〜。なんで絡まれるんだよ。普通ここ、感動的な場面なんじゃないの?
「俺が悪いんですか?」
「俺は悪くない。だったらお前が悪いんだろ」
なんか厄介な人、好きになっちゃったなあ…。
「ウソだよ。勇気出して伝えてくれてありがとな」
先輩はそう言うと、俺のおでこに軽ーくチュッてした。俺の方が背高いのにな。
「記念に何か食いに行くか」
「はいっ!」
歩き出して、気がついた。
先輩、ずっと俺の腕掴んだまま…。
案外けっこう愛されちゃってるって自惚れてもいいのかな?
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