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【SS】左回りの時計
お題「時計の針」
@BL_ONEhour
#創作BLワンライ・ワンドロ!
15分ほど
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あいつが俺の前から突然姿を消した。ついこの間のことなのに、もう随分前のことのように感じる。
それから今まで、どうやって過ごしてきたか、覚えていない。
束縛を嫌う男だと分かっていながら、縛り付ける手を止められなかった。あいつがあまりにも魅力的すぎて、ふらっとどこかへ行ってしまわないか、ひょいと誰かに攫われやしないか、不安で仕方なかったんだ。
……そうだ、新しい男でもできたのかもしれない。
最近よく一緒に帰ってきていた同僚か?
腐れ縁だと言っていた学生時代の友人か?
いや、違うな。
きっと俺との生活に、息が詰まったんだろう。
あいつの様子がおかしいのに薄々勘づいていたのに、気づかぬふりをして縛り続け、一方的に重い愛を押し付け続けた俺が愛想を尽かされた、ただそれだけのこと。
離れていかれるのが怖くて、縛りすぎて、その結果、目も耳も手も届かないところへ消えてしまった。
皮肉なもんだ。
時計の針を逆に巻いても、時が戻るはずはなく。
ああ、誰でもいいからお願いだ。
もう一度だけ、あの頃に戻してくれ。
嘘偽りない愛を確かめあった時期だって、あったよな?
もしもやり直すことができるなら、
気に入らないところは全部治す、
なんだって言うこときくよ、
だから今度は、俺を捨てないでくれ。
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