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使用方法

2018年2月11日参加できず後日書いた分 お題『バレンタイン』 「なあ、明日だな」 ここは寮内、伊織の部屋。  課題こなし中の伊織と、毎日放課後伊織の部屋に入り浸るのが日課となっているユキ。さりげなく接近し、デスクの傍らにしゃがみ込んで下から覗き込む。伊織は答えず手を動かし続ける。 「なあって、なあ」 袖口を引っ張られていい加減苛立ち、やっと伊織はユキの方を向いた。 「何がですか」 明らかに不機嫌な物言いに動じることなく、ユキは続ける。 「何って、アレよ、女の子が好きな男に…って」 「じゃあ僕らには関係ないでしょ」 ピシャリと話を終わらせて課題の続きを始めてしまった。 柘植幸成(ユキ)と高杉伊織が付き合うようになり、半年ほどになろうか。ユキの一目惚れから始まった2人の関係は、どうにもユキの独り相撲が続いている。 伊織はユキより1つ年下ということで、一応敬語を使ってはいるが、慇懃無礼で不遜な態度を貫いている。誰もが振り向く美貌の持ち主だが、決して女のような容姿というわけではない。色白で線の細い印象ではあるが華奢ではないし、身長だってそこそこある。何より性格は男そのもの。 「恋人同士でも贈りあったりするらしいけど」 「しつこいなぁ。そもそも僕に女の役割を求めないでください」 「ヤる時以外は、って?」 伊織の顔が真っ赤になる。怒った顔も可愛い、とでも言いたげに、ユキはニヤニヤしている。 「課題なんか後で手伝ってやるから、こっち向けよ」 結局あの後ユキを部屋から追い出して課題を済ませた。 そして今、伊織は1人デパートの催事コーナーにいる。 「思ったよりハードル高っ…」 そう、バレンタインデーという行事の性質上、客はほとんど女だらけなのだから。 女性という生き物自体が苦手で仕方がない伊織にとっては、なかなかの拷問だ。 さらに一般的には女性から男性へ贈るとされているものを、男の自分が選んでレジへ持って行って支払って… 考えれば考えるほど、Uターンして走り出したくなる。 なんとか無事一歩踏み込むことはできても、並んだチョコレートたちがあまりにも豪奢で可憐なものばかりで、まともに直視できない。どうしたらいいんだ… 翌日。放課後やはりユキは伊織の部屋に寄った。 「昨日も言ってたけど」 ユキが話題を振ろうとした瞬間に伊織は過剰反応し、ビクッと飛び上がった。 「な、何…」 恐る恐る振り向くと。 「えっ」 「俺からお前に贈ったって、いいだろ」 柄にもなく耳と頬を赤く染め視線を明後日に外し、ユキが小さな包みを伊織に差し出している。 「男役とか女役とか考えてねえから。お前が好きなだけだ」 そこまでユキに言わせておいての伊織は、完全にフリーズしている。 「おい、なんとか言えよ、ってか目がヤバいけど」 「ズルい」 「あァ?何がだよ」 「わからない、けどなんかズルい」 わからないのはユキの方だ。何を言われているのかさっぱりだ。 突然伊織が再起動したかと思えば、すごい速度でデスクに向かい、引き出しから何やら袋を取り出して強引にユキの手に持たせ、すぐに離れてそっぽ向く。 「えっ、何、お前もくれんの?」 ユキの顔が輝き、袋を開けると… 「…えっと」 クラシカルで重厚なデザインのガラスボトルに入った、チョコレート。 よく食パンなどに塗って食べると美味しいあれだ。 「…エッロ!」 ユキが叫び、思わず口を抑える。 「ま、まあその前に、なんでこれをチョイスしてくれたか聞かせてもらおうか?」 伊織は赤面し俯きながらもじもじと答える。 「…ボトルが綺麗だったから…」 「いーや違うな。つまりこうやって使って欲しいってことだよな?」 ユキは荒っぽくボトルの蓋を開けると、人差し指で掬って伊織の唇に塗りつけた。 「わ、何すん」 話してる最中にユキが伊織の唇にこってりついたチョコレートを啄み、唇ごと口に含み、そして綺麗に舐めとった。 「この使用方法で間違いねえよな?」  したり顔で笑うユキに、なんと答えていいやらわからない。そんなこと、考えもしなかった。狙って贈ったと思われてるのか、だとしたら恥ずかしい。 だけど、気持ちいいかも。 「じゃ他のとこにも塗ってくか」 沈黙を了解と受け取ったのか、ユキは嬉々として伊織の服を剥がし始めるのだった。

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