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突然の訪問 1
丈と二人きりの星降る宿への温泉旅行は、とても楽しいものだった。
それなのにもう帰りの車の中にいるなんて…時間が経つのはあっという間だ。
「うっ…」
旅先で丈が俺のことをひと時も離さない程激しく抱きまくったせいで、朝から腰が重く、車のわずかな振動にも鈍痛が走り、脂汗が浮かんでしまった。
思わず顔をしかめる俺を、ミラーで確認した丈が心配そうに声をかけてくる。
「洋、躰大丈夫か?すまなかった。辛いよな?鎮痛剤飲むか。一度停まってマッサージしてやろうか」
「いっいいよっ。この位、なんてことないっ」
そうストレートに心配されると、かえって温泉での情事が思い出されて顔から火が出る気分だ。
「私の欲望が洋に負担かけていると実感するよ。そんな姿見せられると…」
「っつ…いいんだよ。俺も求めていたことだし…」
全く、こんな会話恥ずかしいったら。
まさか…まさか露天風呂でも丈が求めてくるなんてギョッとしたけれども、星降る下で抱かれるのも嫌じゃなかった。
「あぁもう俺おかしいよな」
思わず天を仰いで、ため息をついてしまった。
「洋あと1時間以上かかりそうだ。少し寝ていろ」
「そう?うん…分かった。本当に寝ちゃうかも…」
「いいんだよ、休んでくれ」
丈は、心地よい眠気を誘う声で気遣ってくれる。
じゃあ…夢を見に行こうか。
幸せな夢の続きを…あいつの…夢を…
****
二人で馬の遠乗りをした。
新緑がまぶしい森の中を走り抜け、深き森の誰もいないところで馬を降りた。
深きエメラルド色に染まった湖のほとり…
俺は汗ばんだあいつから、木陰に隠れて熱い抱擁と接吻を受ける。
秘めやかな二人の時間。
穏やかな爽やかな風は空高く吹き抜けていく…
****
「洋、もうすぐ着くよ」
「あぁ…やっぱり寝てしまった?行きも帰りもごめん」
「いいんだよ。原因は私にあるからな」
「ったく!その通りだ」
もうすぐテラスハウスに着く。
丈と俺の暮らす家は、俺にとって大事な空間であり、ほっとする場所だ。
が…門の前に佇む黒い人影に、驚いてしまった。
「えっ…なんで?」
まさか…見間違いであってほしい。
来ないで欲しい。
会いたくない。
嫌だ。
心も躰も、さっき迄の穏やかな気分は一気に消え去り、激しく委縮して震えていくのを感じた。
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