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すれ違う 4
「洋、じゃあ今度の日曜日に俺の家に来てくれ」
kaiは名刺の裏に住所をさっと書いて、それを俺のジャケットの胸ポケットに差し込んだ。
「あぁ分かった。丈にも伝える。またな!」
はぁ気が重い……ホテルに戻り、丈は流石に戻っているだろうと客室のチャイムを鳴らすが、中から返答はなかった。
「えっまだ戻ってないのか」
ルームキーをかざし部屋に入ると、やはり真っ暗だった。丈の奴、ずいぶん長い時間、皆とお楽しみなんだな。仕事の歓迎会だって理由も聞いたのに、やっぱり寂しい。
もう寝てしまおう。
明日になればきっと俺も素直になれるはず。寝間着に着替え布団に潜った。
でもやっぱり丈が隣にいないのが寂しい。
ここ数日、夜遅くまで語学学校の課題に終われて丈の方が先に眠ってしまっていたが、丈が横にいれくれるから安心しきっていたのだ。
****
なかなか寝れなくて、うつらうつらしていると、ようやく丈が帰って来たようだ。薄暗い部屋を行ったり来たりしている。どうやら俺が脱ぎ散らかした衣類を片づけてくれているようだ。もう怒ってないのかな。明日には仲直りしよう。そう思うと、ほっと安心して深い眠りに落ちそうになっていた。
ところが……
暫くしてベッドサイドに丈が俺を見つめてじっと立っているような気がしたので、声をかけようとした途端、突然ネクタイで目隠しをされてしまった!
「なっ何!?」
「なんだ起きていたのか? 酷い奴だな。君は」
「丈っなんでこんなことを? 取って! これっ」
「駄目だ」
何? どうしたんだ?
俺は状況に焦って、手で目隠しを取ろうとしたが、あっという両手首をシーツに拘束されてしまった。そしてすぐに強いアルコールの混じった吐息が近づいて来るのを感じた。
お前、酔っているのか。嫌だ! こんなのは。
「丈っ! どうしたんだ? やめろ! 」
上半身を左右に振り必死に抗おうとしたが、丈にがっちりと組み敷かれた躰はびくともしない。そして丈の大きな手で顎を掬われ、左右に振っていた顔の向きを戻され、湿った感触で塞がれた。息をつく暇もない程の激しい口づけに翻弄されていく。酒臭いっ! かなり酔っているようだ。
「洋……君は誰と会ってきた? ご丁寧に自宅の住所まで教えてもらって。どういう仲だ? 彼とは……」
「なっ……それは誤解だ!」
「じゃあ何もなかったとでもいうのか? この名刺はなんだ?」
「何もない。それはっ」
必死で拘束から逃れようと躰をずらそうと試みるが、かなり酔っている丈の力は凄まじい。
「さっきあのホテルマンに路地でキスされそうになっていただろ? 」
「えっ! あっ……それは」
「言い訳するなっ」
「理由があって……聞いて! ちゃんと!」
「もう静かにしろっ」
今度は躰をくるりと裏返され、俯せの状態にさせられた。有無を言わさぬ速さで、寝間着の上着を肘まで一気にずり降ろされ、両腕を背中で拘束されてしまった。目隠しされた上に、後ろ手に縛られてしまい俺は激しく動揺する。
「なっ馬鹿! やめろよ! 」
乱暴な扱いに、みるみる心が羞恥心で染まり恐怖で震え出す。
何とか拘束から逃れようと躰をゆすって暴れるが、動けば動くほ縛られた手がきつくなるだけだった。こんな丈を見たことがないし、こんな姿で組み敷かれていることに呆然とする。
そして丈の手が、俺の寝間着のズボンに伸びて来た。
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