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重なる出逢い 3
電話は丈からだった。
「どうした? あの男の子の容態はどう? 」
「あぁそちらは大丈夫か。あの洋に似た青年はどうしている? 」
「んっ、こっちは問題ないよ。今彼と話していたところ。彼は洋月と言うそうだ」
「そうか。洋月か……なぁ洋、今から病院へ来られるか」
「今から? 」
「実はあの男の子が不安がって、ヨウ将軍を探してずっと泣いているものだから……悪いな、呼び出して」
「分かった。ここはkaiに任せてそちらへ行くよ」
「ありがとう。気を付けて来い」
ふぅ今日は朝から大忙しだ。あちらからもこちらからも呼ばれている。でも俺は……周りからこんなに頼りにされたことは今までなかった。これって嬉しい変化ともいえるのか。でも流石に少し疲れた。
「洋、お前大丈夫か」
電話を切って軽く溜息をつくとkaiの声が後ろからした。いつからいたのだろう。
「あっうん悪いが、この家で留守番をしてもらってもいいか。あの湖の青年は『洋月』という名だ。彼のことを頼みたいが今日、仕事は? 」
「いいぜ、仕事はオフだからな。あっ洋っ、ちょっと待てよ」
「なっ何だよ?」
俺はkaiに手を引かれてキッチンへ連れて行かれた。するとダイニングテーブルに熱々のパスタが用意されていた。
「お前ちゃんとこれ食べてから行けよ、自分の身体も大事にしろ。朝から見ていられないよ。驚きの連続で俺なんて正直もうキャパオーバーなのに、お前はちゃんと受け止めていて偉いよ。俺に出来るのってこれくらいしかないからさ」
「なっ偉いって、俺っ子供じゃないからっ」
「ふふふっ赤くなってるな。本当にいじめ甲斐があるな~洋は」
背中を押され椅子に座らされ、頭をよしよしと撫でられる。全くkaiって奴は。こんな風に可愛がられるのは慣れてないし、気恥ずかしい。
「じゃあ……いただきます」
でも助かった。今何か食べておかないと病院に行ったらまた大変そうだし。
kaiはそっといつも俺をサポートしてくれる。その昔のkaiはヨウ将軍が信じていた部下だったというが、本当にその通りだ。とても頼もしい。今日の一連の出来事だって、kaiが朝迎えに来てくれたからスムーズに事を運べたと思う。
ミートソースパスタを一口食べると熱々で香りが良く本当に美味しくて、ほっとした。身体も心も休まる気分だった。
「美味しい!」
「そうか!俺さ厨房もホテルの研修で手伝ったから、ちょっと料理には自信あるんだぜ!」
「そうか。だからこんなに美味しく出来るのか。kaiありがとう。何から何まで」
「やめろよ。照れるぜ!改まって言われると。この位は簡単なことさ!」
ニカっと白い歯を見せて、kaiは明るく笑った。明るくて懐の広い人物だ。ヨウ将軍が信頼していたのが分かる! とにかくkaiのパスタと笑顔に元気をもらった。つられて俺も笑顔になると、その瞬間kaiはうっすらと頬を赤く染めた。
****
タクシーで病院に到着すると、白衣を羽織った丈に出迎えられた。
「丈、お待たせ」
「洋、来てくれてありがとう。こっちだ」
指示された部屋に入るなり耳を刺すような叫び声が聞こえてきた。これはあの少年の声?
「嫌だっ怖いっ! ここ一体何処だよ!!ヨウ! ヨウどこにいるの? 」
「ヨウっ早く来て!」
「ヨウ──!」
そっと病室のカーテンの隙間から覗くと、病院のパジャマを着たあどけなさが残る少年が、顔を真っ赤にして必死に泣き叫んでいた。
この少年がヨウ将軍が近衛隊長として護っていた大切な王様なのか。ヨウ将軍が手塩にかけて可愛がっていたのだろう。王様の方も絶対的にヨウを信頼している想いがひしひしと伝わってくる。
俺はそっとカーテン越しに声をかけた。
「入ってもいいかな」
「だっ誰?」
「君のヨウ将軍の遠縁の人間だよ」
「ヨウの?」
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