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太陽の影 12
【R18】
今頃……月明かりに照らされたニ階の部屋で、二人の影が重なり揺れていることだろう。
洋……五年前にお前を穢してしまったのは、この私だ。私が求めてやまなかったものは一体何だったのか。今となっては私が何故あの時お前を犯してしまったのか……あの時の気持ちは、もう霞んで思い出せない。
ただ覚えているのは、この腕の中で恐怖にガタガタと震えていたお前の細い躰だけ。もう二度と抱くことのない私の大事な洋は、もうとっくに遠くへ旅立っているのに、いつまでも執着してしまうのは私の悪い癖だ。
私が生きる漆黒の闇に包まれたこの世界で、もう手に入らない、二度と触れられない洋は、気高き白百合の如く咲いている。まるで心の中に咲く花のように白く明るく輝き、私の心の闇を照らしている。
丈くんと現れた時点で、お前がその男をどんなに愛しているのか……愛し合っているのか分かってしまった。
悔しいが敵わない。
当たり前だが敵わない。
私が洋にしたことは背徳行為にしか過ぎない。
どうあがいても……私に勝ち目はない。
まざまざと見せつけられたな。
全く……この私が……
洋、もう遠くへ── 私の手が届かない処へ飛んでいけ。
もう二度と手折られないように。
****
「丈……くすぐったい」
丈の手が優しく俺の乳首を擦り、愛撫してくる。
「洋のここ好きだ」
「はっそんなところのどこが」
「でも気持ちいいんだろう?ここ触られるの?それとも噛んだ方がいいのか」
「もぅっ、いやらしい奴だな」
感じ出した俺の乳首を丈が口でしゃぶって甘噛みすると、じわっと胸の奥が痺れる感覚が増してくる。同時に俺のものが徐々に硬くなっていくことを感じる。
丈が俺の高まったものに指を伸ばす。ドクドクと溢れてくるものを絡めとるように指が動き回る。
「もうこんなに漏れているな」
「いちいち言うな」
「洋は胸を触るとこんなに感じるんだな」
丈が頭を下腹部へずらし、舌をそこに這わせだすと、ゾクゾクとした感覚が全身を支配しだしてしまう。
「あっ……あ…あ」
小刻みに愛撫されれば、その動きに合わせて声が漏れだしてしまう。声が漏れれば途端に下の階にいる義父やKentのことを思い出し、恥ずかしい気持ちが込み上げてしまう。
義父の別荘で、俺はこんな姿で抱かれているなんて!
丈はそんなことお構いなしに、一層愛撫を深めてくる。喉奥まで一気に咥えられ、吸い込まれ、揉まれ、滅茶苦茶に弄られては、俺は悶え苦しむ。
「くっ」
声……出したい。でも聞かれたくない。でも……
「うっ……んっ…んっ」
丈が起こす快楽の波に、俺はどんどんのまれていく。まるで小さな魚のように飛び跳ね、震え……シーツの上を泳いでいるようだ。
「洋、声出せ。下までは聞こえないから、大丈夫だから」
「駄目だっ無理だ。出せない。あうっ」
「強情だな」
激しくしごかれ、俺はつま先から痙攣を起こしたように震え、そのまま達してしまった。
「はぁ……はぁ…」
肩で息をしながら丈を見上げると、丈は口元を手の甲で拭っていた。その手には今俺が放ってしまった白濁のものがドロリとついていた。
「馬鹿っまた飲んだのか」
「あぁ洋のだからな」
丈はそのままその手を俺の蕾にあてがう。ぬるりと滑るような感覚と共に、丈の指が侵入してくる。
「んあっ」
指は俺の襞にまとわりつき、奥へ奥へ入ってくる。
「くっ…」
俺は必死に声を堪える。自分の手を口にあてて、油断すると漏れだしてしまう声を隠す。丈の指が俺の一番感じるとこを大きく刺激した時、激しく大きな声をあげそうになってしまい慌てて、俺は自分の手をきゅっと噛んで耐えた。その手を丈がそっと遮る。
「洋……馬鹿だな、そんな風にしたらお前が傷つく」
「だが…」
「声を出したくないなら、私がその声を塞いでやる」
丈の影が俺の頭上で揺らめき唇と唇がぴったりと合わされれば、俺の感じる声は丈の躰の中に吸い込まれていく。
(あっ気持ちいい……あっ……)
気が付くと丈の太いものが俺の襞の中へ潜り込んでいた。
躰の中に丈がいる。熱い……丈の太くて大きなもの。
(あっ……んっ)
丈がベッドをギシギシと音を立てながら、大きく挿入を繰り返し出す。俺の足は丈の肩に乗せられ、大事なところが丸見えになってしまっている。
(深い!丈が……激しい!)
丈も今日は余裕がないのか、苦し気な顔を浮かべ、額には汗が滲んでいる。
(あうっ)
一層奥を突かれだせば、俺の意識も跳ねて飛んで、躰も大きく上下していく。
(ああっ……)
揺さぶられ、奥を突かれ、そのまま丈と俺が一つになり大きく羽ばたいて、上りつめていく感覚に包まれる。まるで俺たちは一つの光のようだ。
もう此処がどこだか……そんなことどうでも良くなっていく。下の階に義父がいようと、もう関係ない。考えられないレベルに達せられてしまう。もう丈のことしか考えられない。
「洋っ私のことだけ考えろ!」
「あうっ」
丈が振り絞るように囁いたあと大きくはじけた。躰の一番深いところに熱い丈の感情がドクドクっと脈を打ちながら届いた。
お互い肩ではぁはぁと息をしながら、ぎゅっと抱き合う。
その時、俺はなにか大きな山を登り切ったような不思議な達成感を感じた。
そうか……俺は丈によって羽ばたくことが出来たんだな。
あの腐った沼の世界から──
そう思うと心が満ち、頬に涙が伝った。
「……丈……俺、もう大丈夫だ。お前のおかげだ」
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