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暁の星 1
「ハクションっ」
「安志さん大丈夫?」
「あっああ」
「やっぱり床じゃ寝心地悪かったし、冷房が直に当たって寒かったんじゃない?」
「いや大丈夫だよ」
心配そうな涼の声で、はっと目が覚めた。明け方の五時を時計の針は指していた。
昨夜、涼と一緒に弁当を食べ、それから俺はビールを二缶ほど飲んでそのまま……涼からしきりにベッドで寝ることを勧められたが、頑なに断ってフローリングの床にクッションを並べて寝てしまった。背中が流石に痛いが、まぁこの位なんでもない。
中学高校と野球部で鍛えてきたから、雑魚寝なんて大したことじゃない。
「ふぅー」
頭上に手を伸ばして、大きく伸びをする。
いい夢を見ていたような気がする。キラキラ光る水面を進む船の上、洋と丈さんが微笑んでいたような眩しい夢だった。
「涼、悪いな。昨日あのまま俺寝ちゃって、邪魔したな。もう始発も出てるし、一度帰るよ」
「えっ帰っちゃうの?」
「流石にスーツ着替えないと同僚にまた揶揄われるよ。それに涼は今日入学式だろ」
「うん、そうだけど九月入学だからそんな大げさなものじゃないよ」
「そうか。なぁスーツで行くのか」
「一応ね。ほらあそこにかけてある」
涼が指さす場所には、紺色のノーブルなスーツがかけてあった。ワイシャツは白か。うん、涼らしいセレクトだな。清涼な雰囲気が漂っていて、とても似合いそうだ。
「いい色だな。涼のスーツ姿見たかったな」
「そういえば向こうじゃ僕、いつもTシャツだったね」
頭の中でネクタイをきっちりと締めた涼のスーツ姿を想像すると、ストイックな魅力に溢れていそうで思わず笑みが漏れてしまった。
入学式に臨む少し緊張した面持ちの涼に、紺色のスーツが良く映えるだろう。
「安志さんのスーツ姿は、いつも素敵だよ」
「ははっ朝から照れるよ。お世辞なんていいんだぞ。俺はガサツだし拘りもないからダサいだけだ」
「そんなことない!初めて飛行機で見た時だって……」
えっそんな時から俺のことちゃんと見てくれていたのか。そう思うとなんとも甘酸っぱい気持ちが広がってくる。
俺は涼に想われている。
今まで誰かからこんな風に深く想われることなんてなかったから、こういう時どう反応していいのか分からなくなってしまう。気が利いた反応が出来ない自分がもどかしくなる。
「安志さん…あと五分だけ寝ようよ」
「あっ? そうだな」
俺は起こしていた上半身を再び倒し、フローリングの床にごろりと寝そべった。涼はその様子を見てくすっと微笑んだ。
「何? 」
「違うよ。こっちで一緒にっていう意味だよ」
「えっ」
「ねっ」
「いや……それ無理だから……」
朝から拷問だぞ。涼、それっ!
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