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重なれば満月に 2
「安志さん? 」
「おっおお! 洗面所の棚だな」
「そう、そこの下の棚に入ってない? 」
動揺してしまった。今このタイミングで声を掛けるなんて、涼の奴……さりげなく俺のこと煽ってるんじゃないよな。苦笑しながらバスルームへと向かった。
「ほら、あったよ」
バスルームの扉を開ければ、ふわっと白い湯気と共に、涼の綺麗な肌色が目に飛び込んで来た。バスルームにはいつも涼が使っているボディシャンプーの清潔な香りがむせ返るように立ち込めていた。
「ありがとう! 助かったよ」
涼のほっそりとしているのにか弱い印象ではない、しなやかに筋肉のついた美しい裸体に目がくらみそうだ。ついムラムラと湧き上がる情動を抑え込めず、シャンプーに手を伸ばした涼の腕を掴んで、動きを制止してしまった。
涼は不思議そうにその掴まれた腕を眺めていた。
「安志さん、どうしたの? 」
「涼、俺が髪を洗ってやる」
「えっ? 」
「まだ傷の部分庇いながらだろ。大変そうだし」
「うっうん、でもなんか恥ずかしいな」
「そうか……病院では看護師さんに躰を拭いてもらったんだろう。初日は点滴だらけで動けなかったはずだから」
「なっなんだよ。もぅ! 恥ずかしいこと思い出させないで欲しいな」
「くくっ。涼、なぁ……俺も一緒に風呂はいっていいか」
笑いながらも、病院に運ばれたばかりの痛々しい涼の姿を思い出してしまった。可愛い涼と今は一瞬たりとも離れたくない。だから珍しく俺の方から積極的に口走ってしまった
「え! う……うん」
涼は耳まで朱色の染め上げて、恥ずかしそうに俯いている。
そういえば二人きりで風呂に入るの初めだな。洋と涼と一緒に銭湯に行ったことはあるが、あの時は二人の警備みたいで楽しむどころじゃなかった。
「ありがとう。ちょっと待ってろ」
急いで服を脱ぎ捨て、バスルームに俺も入った。
「うわっ」
涼は俺を見るなり、湯船に顔をぱっと伏せた。パシャンっと水が跳ねる音に、心臓が高鳴っていく。
俺は涼の後ろに回り込むような形で、湯船に浸かった。
流石に男二人で入るには浴槽が狭いが、なんとか収まった。涼の肩を俺の胸に乗せるような姿勢に誘導すると、涼が恥ずかしそうにもぞもぞと動いてしまう。
その度にお湯が……心臓の音と呼応するかのように溢れて零れていく。
「おい涼、そんなに恥ずかしがるなよ。俺の方が恥ずかしくなる」
「だって、ここすごく明るいし……安志さん…逞しくてかっこいいから困るよ」
「何言ってんだ。涼ならモデルの仕事でもっと綺麗ないい男を沢山見る機会があるだろ。俺なんてほんと平凡だ。涼と不釣り合いなほどだ。平凡なあっさりした顔してるって、さっきも凹んでいたところだぞ」
涼は意外そうな声をあげた。
「何言っているの? 安志さんはすごくカッコイイんだ。だから僕、今……馬鹿みたいにドキドキしている」
「ははっ涼はやさしいな。励ましてくれるのか」
「本気で言っているんだよ。ほらっ」
そういいながら涼は俺の手を掴んで、自分の胸にあてた。
俺の手が感じる涼の胸の鼓動。
ドクドクドクドク……と、早鐘を打つ心臓の音に、俺の躰も一気に熱くなっていく。
「涼、随分と積極的だな」
「あっ違う……そうじゃなくて」
躰を捩ろうとする涼を制止して、手の平で涼の躰を味わうようにまさぐっていく。涼の少し汗ばんだお湯で濡れてキラキラと輝く胸板を撫でまわして、小さな突起を指先で摘まんでやると、涼は悩まし気に目を瞑って「あっ……」っと感じているような小さな喘ぎ声をあげた。
「涼、今日は声我慢しなくていいんだぞ。もう病室じゃないんだから」
「んっ……ん…ん」
涼の首元に顔を埋め、ちゅっと吸って、さらにリズム良く吸う力を徐々に強めていく。すると涼の滑らかで柔らかい皮膚が、花弁のあとのように一部分だけ赤く染まった。俺は何とも言えない満足感を得て、その部分を指先でなぞりながら、涼の耳元で囁やいてやる。
「もっと痕つけていいか。今日は……」
本当はさ……ずっと我慢していたんだ。
モデルの仕事の妨げになるから、激しく抱くことも躰に痕跡を残すことも避けていた。
「今日位いいよな。一週間仕事がないのだから、俺が深く抱いた印をつけてもいいよな」
「安志さんっ……僕も……今日はそうして欲しい」
涼が熱を帯びた潤んだ目で強請るように訴えたので……もう理性が吹っ飛んでしまった。
次の瞬間、お湯が大きくうねり、湯船から大量に零れ落ちた。
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