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番外編 ハロウィンナイト 2
『R18』
今日は10月31日だったか。道理で騒がしいと思ったらハロウィン当日なのか。
ハロウィンパーティーはわが社の一大イベントで、毎年、新入社員が女装をさせられたりと大騒ぎだ。私はパーティーに出る気なんてさらさらなかったが、格好の餌食になりそうな洋のことが、心配になり部署を訪ねてみた。
すると案の定、予想通りというか、寄ってたかって見世物になっている洋が遠目でも分かってしまった。
はぁ……全く、これだから一人にしておけない。それにやっぱり女装させられているな。
目を凝らしてみると……何か白い服を着てるいるようだ。おいっスカート丈、短すぎないか。でも、男のくせにスカートが違和感ないってすごいな。本当にすっとした綺麗なシルエットだ。
ところが近くまで行くと、その仮装が看護師の制服だと分かり、心臓が止まるかと思った。
「え……看護師姿だったのか」
おいおい看護師ってこんなに綺麗な存在だったか。思わず目をこすってしまった。よく見慣れたはずの制服なのに、洋が着ると一味も二味も違うものだ。清楚で穢れなき天使のようにさえ見えてくる。
しかし、こんな姿を他の奴に見せるなんて耐えられない。嫉妬心がふつふつと沸いてきて、思わず洋の腕をひっぱり、さっさと医務室へ来るように伝えてしまった。
洋は恥ずかしそうな顔をしていたが、きっと来るだろう。
そのまま医務室に戻ろうと思ったが、洋がパーティー会場に強引に連れて行かれるのを見て、心配になって後ろから付いて行ってみた。角を曲がると、真っ赤なドレスで妖艶な魔女の姿をしている一際目立つ女性が目に入った。
あれは日野 暁香だ。洋の奴、まずい奴に会ったな。
赤い口をすぼめながら甘えてくる……美人で気が強く火のような情熱を持った女。彼女とは恋人ではないが、これまでに何度も関係を持った仲だ。勘がいい女だから気を付けねば……
案の定、洋に興味を持ってなにやら熱心に話しかけている。話しかけられている洋が壁に追いやられ、たじろぐほどの勢いだ。相変わらず高飛車な女だな。
「ふぅ……」
小さなため息を漏らしてから戸惑う洋を助けるため、暁香の注意をこちらに向けさせる。
ー 後で会おう、洋 ー
そう、目で合図すると、洋は安堵した表情と少しだけ不安げな目をして、去って行った。 それから、暁香に暫く付き合った後、盛り上がっているハロウィンパーティーを後目に、ロッカーに寄って洋の着替えと荷物を持って、自分の研究室兼医務室へと戻った。
「洋、いるのか」
電気がついていないのが不安になり、暗闇にそっと声をかけてみるが返事はない。耳を澄ますと、ベッドから微かな規則的な寝息が聞こえてきた。そっと近寄ると、ベッドで身体を丸めてぐっすり寝ている看護師姿の洋が目に入った。街の明かりが反射した研究室は薄暗いが、良い雰囲気だ。
ベッドに腰を下ろし、洋の頬を優しく撫で、少しウェーブがかった黒髪を手で梳いてやると、ビクッと洋の躰が反応してどうやら目覚めたようだ。
「……ん…あっ……丈?」
「あぁ待たせたな」
「悪い。少し寝ちゃったね」
まだ寝ぼけてぼーっとした洋が手元に持っている着替えに気づき、ほっとした表情を浮かべた。
「丈、もしかして俺の着替え持ってきてくれたのか」
「あぁ、ほら着替えさせてやるよ」
「なっ!いいよ」
途端に顔を真っ赤にして首をぶんぶんと横に振りながら、慌ててベッドから降りようとする洋の肩を掴み、耳元でそっと囁いてやる。
「その姿、最高に可愛いよ。ちゃんと私に見せてくれ」
「やめろよっ!俺は女じゃないんだから変に決まってる。早く着替えを渡せよ」
「いや……女よりずっといい。洋はとても綺麗だ」
洋の薄い耳たぶをぺろっと舐めながら、男にしては細い腰に手を回しきつく抱きしめてやる。
「うっ……あぁ…」
それだけですっかり感じやすくなった洋が小さな声をあげる。続けて白い制服の襟元を緩め、ほっそりとした白い首筋にそっと舌を這わせてやる。
「おいっ待て……ここ職場だろう。もう……家に帰ろう」
「酷いこと言うな。洋のこんな姿を見たら家までなんて持たないよ。大丈夫だ。鍵もかけたから、ここには誰も来ない 」
「だが……」
「もう黙れ」
小さな抵抗をする洋を抱きかかえ、そのまま医務室のベッドへと押し倒した。
****
医務室のベッドは、清潔で気持ちが良かった。
うっかり寝てしまっていたら、丈が戻ってきてくれた。
俺をきつく抱きしめ、口づけし、甘い言葉を沢山くれる。そんな丈に俺の心はあっという間に攫われてしまう。次第に、丈の男らしい骨ばった手が、俺のスカートの下から入り太腿を弄りはじめると、いつもと違う過程と感覚に躰が大きくビクっと跳ねてしまった。
「んんっ」
「ふっ……もうこんなにして。君こそ、これで家まで我慢できるのか」
「いっ言うな!」
丈の手が俺の固くなっているものを包み、優しく扱き始める。履き慣れないスカートの下から手を入れられる恰好になり、何とも言えない羞恥心が溢れてくる。どんどんと侵入してくる手を押し返そうと必死にもがいているが、気持ち良さの方が増しだんだんその力も弱くなってしまう。
「あぁ……駄目だ………やめろ…」
そのままベッドに押し倒され、俺の上に跨がった丈に制服の襟元のボタンをひとつずつ外されて、露わになった部分に順番に口づけを落とされていく。
丈の手が丈の唇の感触が……心地良い。
****
「ふぅ……んっ」
月明かりに照らされた医務室。
声を我慢する洋の苦しげな表情に、私の中心がどんどん欲情していくのを感じる。洋の白く滑らかな肌が次第に露わになると、胸元の突起を指でそっと撫で、その次には摘み、強弱をつけて刺激していく。
「あっ…あっ」
左手で洋のものを大きく刺激しながら、右手では突起を攻め、それから口に含み舌を巧みに使って転がしてやると、どんどん躰の中が熱くなってくるのが止まらない。外に漏れないようにと押し殺していた洋の声も、次第にあえぎ声へと変わって行き、その色っぽさが脳を刺激し、私自身の余裕もなくなって行く。
「洋、挿れてもいいか」
「ん……あぁ…もう丈の…欲しい」
洋の乱れ方がいつもより早い。いつもと違う自分の姿に戸惑っているのだろう。そして会社の医務室という場所もお互いの興奮を煽るには格好の場所だ。そのせいで、いつもならなかなか聞けないお強請りが聞こえくると、胸がきゅっと締め付けられる。
可愛い…愛しい。そんな気持ちが行動を更に先へと先へと誘っていく。
洋の着ている看護師の制服を下にずらし下着も脱がし、生まれたままの姿にしていくと、少しだけ残っている理性で辺りを見回し不安がるので、その洋の髪を優しく撫でてやる。
「丈、本当にここで大丈夫か。誰か来たら?」
「大丈夫だ……安心して私に身を任せろ」
「んっ…丈、なんで俺なんだ?なんで俺を抱く?お前ならどんなイイ女だって寄ってくるじゃないか。さっきだって女の人と楽しそうだったし……」
不安げに涙を堪えた眼で訴えてくる洋の唇に、指をあててやる。
「しっ……もうそれ以上言うな。男とか女だからではないんだ。私は洋だから好きになったんだ。触れたい…抱きたいと思った。こんな感情を抱いたのは私自身も初めてだ」
「丈っ……俺も丈だから躰を許したんだ。他の奴じゃ駄目なんだ。お前だからこんなに気持ちよくなるんだ」
「ありがとう。洋、その言葉が嬉しいよ」
「ありがとう」とささやきながら、洋の整った唇に近づいていく。洋は男なのに、いい香りがする。優しく落ち着く花のような清楚な香りだ。その香りで満たされながら舌を絡めとり、深く熱いキスで口腔を満たし濡らしていく。
「ん……すごくいい…」
洋はキスが好きだ。深いキスを落とせば落とすほど、洋は興奮し躰を震わせていく。
「丈…もうじらすなよ…もう俺……」
「言ってみろ、何をして欲しい?」
「……さっき言った」
「もう一度」
「意地悪だな…丈の…欲しい」
洋の蕾が私を迎え入れるかのようにヒクヒクと痙攣している。洋が先に放った溢れる白濁のものを、その入り口に塗り、指を挿入して洋が深く感じるところを探してやる。見つけたその場所をぐいっと押し潰すように刺激すれば、躰を跳ね上げてあげる色っぽい声に煽られる。
「あぅあっ…そこ…嫌だ……もう……」
洋の感じている顔に、私の熱もどんどん上がっていく。
「洋、もういいか」
洋が一瞬息を呑んだ後コクリと頷くのを見届け、洋の腰の下に枕を置き、それから細い足を左右に大きく広げさせ、一気に熱を押し進める。
「んんっ」
締め付けてくる洋の躰の中の熱く熟れた部分の……最奥をめがけて、腰を動かしていく。
「……ん…んっ…」
私の腕の下で悶える洋の、色香溢れる惚けた表情にもう熱が収まらない。
「洋、そんな顔、私以外誰にも見せるなよ」
「くっ…あっ……当たり前だ。丈にしか見せない。だから……丈も…」
「なんだ?」
その先の言葉を、洋は呑み込んでしまった。
「洋の望みはなんだ?聞いてやる」
「…だから」
「だから?ちゃんと話せ、今日は隠し事はなしだ」
「うっ……だからっもう俺だけを抱けよっ」
心に響く言葉だ。
あぁその通りだ。
もう私の躰は、洋にしか欲情しなくなっている。
さっき暁香と接して実感した。
「洋、その通りだ。もう私はお前だけを抱く」
洋……可愛い。
私としたことが、こんなにも一人の人間に溺れていくとは。
洋の脚を更に大きく開かせ持ち上げて、私の肩にかけさせる。さらに細い腰を両手で掴んで、入り口ギリギリまで引き抜いたものをもう一度最奥目指して激しく何度も何度も突き上げていく。洋が壊れてしまわないか心配になるほど、私は夢中で突き上げ続けた。
この欲情……こんなに激しいものを私が持っていたなんて。
洋だけを、ひたすらに求めていく。
何故なのか。君はずっと手に入れたかった守りたかった、共に過ごしたかったと感じる大事な人なんだ。
「あうっ!深いっ!も……もうイクっ……くっ」
「洋っ……くっ」
洋のものからもとろとろと蜜が溢れ出している。喘ぐように躰を震わせ、助けを求めるように伸ばした手をシーツに押し付け、絶頂まで更に二人共に駆け上がっていく。
ふと見下ろすと、乱れた洋の髪に真っ白なナースキャップが取れかかりながらも、まだついていた。そんなアンバランスな姿を見つめると愛おしい感情で心が溢れた。
余韻でぼんやりしている洋の汗ばんだ躰を、もう一度優しくギュッと抱きしめてやる。
「まだだ、もっと欲しい」
「……いいよ。丈になら……何度でも……抱かれたい」
~ハロウィン・ナイト~
素直な気持ちを広げ……絡み合う二人の熱い想い。
魔法仕掛けの甘く熱い営みが、闇に紛れ密かに繰り広げられていった。
了
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