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太陽と月1

「あと洗濯機も欲しいな」 「洗濯機? そんなものまで? 」 「あぁ朝っぱらから私が母屋で洗濯していると、流兄さんにニヤニヤとした目で見られるのが、私が居たたまれない」 「あっそうか……ごめん」  俺は朝食の手伝いで忙しくて、そこまで気がまわっていなかった。  でも、夜な夜な俺を抱こうとする丈も悪い。いや……それに応じ、結局は俺だって丈を求めてやまないのだから同じだけど。  思わす苦笑してしまった。 「じゃあそのリフォームをする暁には、洗濯機もここに置こう」 「いいのか。リフォームしても? 」 「もちろんだよ。丈の好きなようにしていいよ」 「いや、ちゃんと洋の意見も取り入れたい。二人の家なんだから」 「俺の? 」  リフォームか。この和室も風情が合って気に入っていたが、丈の話を聞くと確かにいろいろ居たたまれない。丈が提案してくれたことを想像すると、ぼんやりと頭の中に間取りが浮かんで来て、なんだか気恥ずかしくなってしまった。 「なんか、本当に新婚生活って感じだな」 「洋、それで間違ってない」 「ははっ、じゃあ俺は仕事部屋が欲しいかな」 「個室か? 」 「いや……丈もよく仕事を持ち帰っているし、俺も翻訳の仕事がちらほら入ってきているし……そうだな、丈と並んで勉強したいな」 「じゃあ、机を横に並べて配置しよう、後ろには背が高い本棚も置こう」 「あぁそれいいね。でも仕事部屋では厳禁だぞ」 「分かっている。他の部屋では、いいってことだな」 「はぁまったく君の想像力と欲望はどこまでも豊かだな」  朝食の時、丈からお父さんと翠さん流さんに、離れをリフォーム工事したい旨を申し出ると快諾してもらえた。おまけに翠さんの同級生の建築事務所まで紹介してもらえることになって、いよいよとんとん拍子に進みそうだ。 「それから洋くん……お墓のことだが」 「はい」 「お母さんのお墓をどうするつもりだ? よかったらこの寺に※改装してはどうかね? 君にその気があるのなら、月影寺の墓地への『受入証明書』(永代使用許可書等)を発行させて欲しいのだが」 「ありがとうございます。その……もしよかったら俺の父の墓も一緒にこちらへお願いしたいのですが」 「あぁもちろんだよ。その手続きは私に任せなさい。君はもう息子だから甘えていいんだよ」 「ありがとうございます。お……とうさん」  初めてそう呼んだ。  丈のお父さんも嬉しそうに微笑んでくれ、胸が熱くなる。  すべてを許してくれる慈悲深い微笑みだ。 「なんだい?」 「ありがとうございます、何から何まで……こんな俺なのに」 「それは違うよ。洋くんだからだ。丈のことをどうか頼むよ。丈がこんなに人に興味を持つなんて、初めてだ。君が丈を人間らしくしてくれたんだよ。人を心の底から愛することが何かを教えてくれたのだ」 「俺は、そんなこと……」  俺の方こそ、人から心の底から無条件に愛されることの暖かさを思い出させてもらった。最初は父の墓の隣に母の墓を持ってこようと思っていた。それは夕凪と夕顔さんの話を知らなかったら。  丈と俺の出会いに繋がる二人のこと。夕顔さんの魂はもしかしたら俺の母に繋がっているのかもしれない。だから二つの魂を会わせてあげたい。そういう気持ちが芽生えたので、父と母の墓を月影寺へと移してもらうことにした。  有難い申し出だった。 「洋くん、忙しくなるな」  流さんが笑顔で、大きな包みを台所から持って来てくれた。 「これは? 」 「ほら、今日報告に行くんだろ、君の従兄弟の涼くんだっけ? 彼のところに」 「あっはい。でもこれは? 」 「彼は一人暮らしだろう。いろんな総菜を作ってあるから、差し入れてあげるといい」 「わっ!嬉しいです!ありがとうございます!」  朝食を作っている時に涼のことをちらっと話しただけなのに、こんなに用意してくれて、感謝の気持ちでいっぱいだ。  涼には、本当にいろいろ心配かけたし、アメリカの彼の両親からも頼まれているので、一度様子を見に行こうと思っていた。 「洋は今日は涼くんの家にいくのか」 「うん、そうするよ。やっぱり会って話したい。俺の大事な肉親だしね」 「そうだな、それがいい」 ※改葬…お墓(お骨)を移動させること。

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