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集う想い8

「もしもし洋か」  やはりKaiだった。だがいつもの明るく陽気な様子とは少し違って、焦って不安そうな低い声のトーンだった。なんだろう? 嫌な胸騒ぎがする。 「Kaiちょうど電話しようと思っていたところだ。どうした? 」 「あのさ……いや……」  何かを言いかけて、Kaiは無言になってしまった。その沈黙が重たく感じた。 「Kai、どうした? まだアメリカなのか」 「あっああ。そうなんだ。あれからこっちのホテルで結構長引いてさ、そうだそれより洋の方は、もう大丈夫か。日本に帰国して上手くやってるか」 「うん、あの時はありがとう。Kaiが来てくれて心強かった」 「そうか、よかったよ。俺はやっぱり呼ばれて行った気がするよ。あんなタイミング普通ないもんな」 「そうだね。きっとそうだと思う。それより俺に何か用事があったんじゃないか」 「そうなんだ。実はさ優也さんと連絡が取れないのが気になって」 「松本さん? 今もソウルにいるんだよな? 」 「そのはずなんだが……ニューヨークに行く日に見送ってくれて、その時は寂しそうにしていたけど特に変わった様子もなかったのに、この数日全然連絡がなくて……出張中もメールは、いつもくれるのに全然なくてさ」 「それで?」 「で、しびれを切らしてソウルのホテルに電話して優也さんの様子を尋ねたらさ、自ら休暇を願い出て、仕事をずっと休んでるいるって言うんだよ」  Kaiの声はどこか焦っていた。 「えっ休暇なんて珍しいな。Kaiもいないのに」 「だろ? 気になってしょうがない。本当は俺今すぐにでもソウルに戻って探したいのに。くそっ。仕事が次から次へと入って来て、帰れないのがもどかしいよ」 「そうか」 「なぁなんか悪いことじゃないよな?日本でなんかあったとかさ」 「えっ日本で?」  思いもしないことを聞かれて驚いた。 「いや……だってさ優也さんはさ、ソウルに知り合いもほとんどいないし、数少ない知人に聞いても、皆行先を知らないって言うし……じゃあ日本へ戻ったのかとか思うだろ? 普通」 「そうだね、確かにその通りだ」 「洋はさ、優也さんの日本での連絡先とか知らないか」 「うーん俺はソウルで松本さんと出会ったから、日本でのことは……何も聞いてなかったな」 「うっやっぱりそうか。何か知らないか、何でもいいか……あぁ困ったなぁ……」  しょぼんとトーンダウンしていくKaiの様子が悲し気で、何とかしてあげたくなった。  そこで必死に記憶の糸を辿ってみると、一つ思い出したことがあった。 「そういえば……松本さんが前にいた会社のことなら、聞いたことがあったような」 「本当か!お願いだ!すぐに調べてくれないか」 「いいよ、調べてみる。何か分かるかもしれないしな」  いつも頼ってばかりだったKaiに頼られているのが不思議なような、くすぐったいような感覚だった。そして俺もKaiの役に立ちたいと強く思った。 **** 今日の更新分は、丁度『深海』の「共に歩む道 3・4」とリンクしていますので、合わせて読んでいただけると分かりやすいかと思います。

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