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『蜜月旅行 63』もう一つの月

 翠の透明感のある澄んだ瞳が好きだ。  翡翠色の湖のように静かで落ち着いた眼差し。その目で見つめられるだけで、いつも心が静まり穏かになった。なのに今日の俺は……その湖に波を立てたいという衝動に駆られていた。  初めて翠に欲情したのは、いつだったか。  そうだ……中学生になり北鎌倉に家族で越して来てから、あやふやだった想いが決定的になったのだ。  一人で翠の写真を握りしめ、抜くことしか出来なかった青い時代。  何もかも封印する覚悟で、翠を見送った二十代。  離婚して寺に戻って来た翠を見た時、俺はもう……どう接していいか分からなくて一時、距離を置いてしまったこともあった。  あれから一体何年経ったのだろう。  俺も翠も、もう30代半ばだ。それでも今、俺はまるで10代の少年のように、翠のことを熱く盛るように求めている。  火がついてしまったのだ。  ずっと押し隠していた翠への想いに。  先ほど、翠から放たれたものを一滴も零すことなく飲んでしまった。  翠も俺と同じ男だと当たり前のことを実感すると同時に、ずっと求めていたものを手に入れ、潤ったような気持が満ちた。  だが飲んだばかりなのに、翠の一部を手に入れたばかりなのに……すぐにまた翠が欲しくなっていた。  もっともっと欲しくなる。  喉がカラカラだ。 「流……」  今俺のことを見上げる翠の瞳は、今までに見たことがない色をしていた。  翠……じっと何を見ている?  その視線を辿って驚いた。  え……もしかして俺の屹立を見ているのか。  いつも慎ましい翠がそんな所を凝視しているのが信じられないような嬉しいような、複雑な気持ちだ。  挙句の果てに、何を言うのかと思ったら…… 「……立派だ」  何だってそんな煽るようなことを言うのか。  あまりの可愛さに、クラクラと眩暈がした。 「翠。おいっそれ反則だ、どうするんだよ。こんなにガチガチなのに!」  溜息交じりに文句を言ってしまった。もう今すぐにも挿れることが出来るほど張り詰めて、大きくなったものが苦しい。こんなにも興奮したことが、未だかつてあっただろうか。  ずっと憧れていた翠の生身の裸体を前に、我慢しろという方が無理なものだ。だが男性との経験がない翠にいきなり挿れることは出来ない。  強烈なジレンマに襲われていた。  その間にもどんどん痛い位大きく張り詰めていってしまう。 「いてっ……」 「大丈夫なのか。流……あの……僕はどうしたらいい?」  その様子が伝わったのか、自信なさげにすまなそうに翠が聞いて来た。  どうするって……  どうしようもできない!もう我慢できない! 「翠、ここを触ってくれないか」 「えっ」 「駄目か」 「うっ……」  翠が困ったような曖昧な笑みを浮かべた。翠の頼みを俺がいつも断れないのと同様、実は翠も俺の頼みを断れないのを知っている。俺もたいがい意地悪だ。 「ん……分かった」  翠のほっそりとした指先が俺のものに触れた。初めて触れてくれた指先がひんやりと気持ち良くて、思わずブルッと武者震いしてしまった。 「わっまた大きくなった。こんなに……」 「もう俺も辛い。一度出したいから、手伝ってくれ」 「……えっうん……分かった。こ…こう? 」  翠の手が、かなりぎこちなく俺の雄を扱き出した。拙い動きが可愛くて、俺は翠の耳元にちゅっと口づけをした。 「翠、可愛いよ。もっと動かして」  翠の手に俺の手を添えて、しっかりと握らせると、翠の手がビクンと震え強張ったのが伝わって来た。 「んっ……流の……熱い」  正直すぐにでも出そうだった。だがそれは男としてあれだから必死に耐えていたのに…… 「流は見惚れてしまう程……男らしいな、かっこいい……」  そんな甘い言葉を翠が言うもんだから、突然込み上げて来た情動により、寸前まで迫っていたものが、あっという間に弾けてしまったのだ。 「くっ!」 「わっ!」  翠の手をべとべとに汚し、翠の白い腹にも白濁のものが少し飛び散ってしまった。 「はぁ……翠が悪いんだぞ。それ反則だ」 「ごっ……ごめん」  謝る必要なんて本当はないのに律儀に謝って来る翠が、もう可愛くてしかたがなかった。  このまま終わりになんてやっぱり出来ない。  もう止まらない。  翠の躰の中で、受け止めて欲しい。  俺の欲望の何もかも全部……受け止めてくれよ。

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