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僕の光 13

 さっきからずっと……俺の腹の上に股がり腰を振る翠から目が離せない。  そっと伏せた瞼、男にしては長い睫毛が震える様子。上気した頬は桜色に色付き、それは翠の乳首と同じ色に染まっていた。少し汗ばんだ素肌はしっとりと滑らかで、いつまでも触れていたくなる。    翠は今何歳になったのか。  そういうことは少しも問題ではない。やっと心も躰もすべて手に入れた俺の恋人だ。  「あっ……ん……」    俺が突き上げるように腰を揺らせば、翠は少し苦し気に眉根を寄せる。その表情に高揚する。  無意識なのか、それ……今宵の翠はどこまでも官能的で扇情的だ。  俺のバカでかいものをみっちりと咥え込んでいく様子が、ここからだとよく見えるので、本当に翠の躰の内部に、俺が溶け込んでいるのだと実感できた。  ふと目が合うと翠は恥ずかしそうに口を尖らせた。 「流……あまり見るな」 「翠が見えるような姿勢でやるからだ」 「馬鹿っ……あっ……んんっ」  慌てて降りようとするので、その細い腰をガシッと掴んで動くことを許さない。もっと奥へ届くように密着させた部分をグイッと押し上げると、翠が「あうっ!」と大きく喉を反らした。 「あ……流っ! 駄目だ。深い……深いよ」  このような壮絶な色気を振りまく兄の姿を見られるなんて……しかも俺の上で感じてくれている姿、最高に綺麗だ。  本当に長い年月耐え忍んだ甲斐があったよ。  克哉のことは許せない。だがもうアイツを個人的に憎むのはやめた。  ずっとあいつに復讐してやりたいと思ったが、翠のために我慢していた。俺が勝手に手を下したら翠が悲しむと思って、ずっとそのジレンマに苦しんでいた。だが結局……アイツは自滅した。今度こそ法の裁きを受けろ! 過去の分も清算しろ! もう二度と現れるな!  翠が再び危険な目に遭ったのだけは、悔やまれる。  あんな奴に触れられたのも悔しい。  でもそれはもう……過去にしよう。  俺がそんなこと忘れられる程、翠を愛せばいいのだから。   「まだだ! もっとだ」 「流……いいよ。お前になら」  翠は慈悲深い表情で俺を抱きしめてくれた。  ふわりと羽衣が舞うように…… 「流は……僕の光だ」  翠の内股から俺が放出したものが、滴り落ちて濡れていた。ほっそりとした太股に手を這わせると、翠が甘い吐息を吐いた。  色っぽい……翠の裸体を目の当たりにして、ぞくっと俺も武者震いした。  そんな翠の躰を反転させ今度はシーツに沈め、深く口づけをしてやった。  いつも凛として隙のない兄をこんなに淫らな色に染めたのは俺だ。そのことに征服欲が芽生え、同時に愛おしい気持ちが募る夜だった。 **** 「あのさ、入ってもいい?」  丈とのキスに夢中になっていると、風呂上りの薙が真っ赤になって浴室のドアから顔を覗かせていた。あっ……この離れは俺たち以外の誰かを泊めることを前提として作られていないので、こういう時、本当に困ってしまう。 「わっ! うん、ごめんよ」 「オレ……お邪魔だよね」  きまり悪そうに薙が言うので、申し訳ない気持ちになった。 「薙くん。おいで……俺と一緒のベッドで寝よう!」 「うん。あーでも丈さんはどうするの?」 「……私はソファでいい」  丈も流石にそこは大人対応だ。それが妥当だろうと思ったら…… 「えー丈さんも一緒に寝ようよ。雑魚寝って奴? 部活の合宿だと結構するんだぜ」 「えっ私も?」  流石に丈も焦ったようだ。俺たちのベッドはキングサイズだが、そこに男三人って、あり? 「駄目……もうオレ限界。おやすみなさい……」  そんなことを相談している間に、薙はベッドのど真ん中でスヤスヤと眠りについてしまったので、丈と顔を見合わせて微笑んでしまった。 「ふふっ……なんだかあっという間に眠ってしまったな」 「あぁ、かなり疲れていたんだろう。強がっているがまだ子供だ」 「そうだね。本当に寝顔があどけないな。本当にこの子が穢されなくて良かった」  ふたつの危機を救えた。  その役に……少しでも立てたのなら本望だ。 「さてと、私たちも風呂にはいって、薙を挟んで眠るとしよう」 「そうだね。今日は薙の近くにいてやりたい」 ****  私が風呂から上がると、もう寝室の電気は消えていた。そっと覗くと、先に風呂にあがった洋が薙にくっつくように眠ってた。  やれやれ、まだ髪も乾かしていないのに。  ストーブに薪を足し、ヤカンにお湯を沸かした。電気の暖房とは違う、躰の芯から温まる温もり部屋を包んでいく。  丸い氷をいれたロックグラスにウイスキーを注ぎ一口飲むと、今日1日、何もなかったかのような静寂に包まれた。    洋と出逢い、洋と暮らすようになって……私は本当に変わった。  人が好きになった。だから人と関わることが苦ではなくなった。  誰かのために何かをしたいと、切に願うようになった。  兄のため、恋人のため……何かが出来た自分を褒めたい気分だ。  私は今を生きている。  独りじゃないと感じられる瞬間に、実感できるようになった。  洋と過ごして、どの位の時が過ぎただろう。  千……二千……数えきれない程の夜を迎え、朝を迎えた。  これからも、君は『私の光』だ。  生きて行くためには、誰にでも見つめていたい光があるはずだ。  その光とは、共に歩み続けたいと思える希望の糧でもある。  私がみつけたのは洋……君という光だ。                        『僕の光』了

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