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慈しみ深き恋 1

「洋たちは、あの部屋に泊まるよな。もう修繕も終わったし」 「ありがとうKai、そうさせてもらうよ」  俺と丈が泊まる部屋は、ヨウ隊長が幼少期を過ごしたという部屋だ。  丈と暗い部屋に入り、電気をつけようとしたら、部屋の真ん中辺りに、まだ幼いヨウの蹲る姿がぼんやりと陽炎のように見えたので驚いた。 「あっ……」 ……  俺の部屋……この空間だけが、俺の自由。  いつかこんな俺を救いだしてくれる人が現れるのだろうか。  きっといつか出逢える。そう信じながら鏡を握りしめ、まだ幼い俺は眠りについた。  ── 泣いて 笑って 想って誓った、少年時代の俺の部屋 ──                             (悲しい月~俺の部屋・俺の自由~より) …… 「洋? 大丈夫か。何か感じるのか。ここは……何故か懐かしいものだな」 「丈もそう思う? 俺は今、ヨウの幼い頃とすれ違ったよ」 「そうだったのか」  丈と見つめ合い、深く頷きあった。  遠い昔の出来事が、現実にあったと確信できる前世の名残りのような空気が、微かにこの部屋には漂っていた。 「洋……」 「丈……」  俺たちは、もう待ちきれなかった。  支度を整え布団に入ると、すぐに丈に深く抱きしめられた。俺もそうしてもらいたかったので己の身を深く投じた。  丈の腕の中が心地よい。君の香りに酔いしれそうだ。 「少し離れただけなのに、俺達はもうこんなに求めあっている」 「そうだな。それに今回……洋は随分私に心配かけたからな。全く……女性と出かけたり外泊したり……それに、ひとりでアレを卒業してしまうなんてな」  全部きちんと話していたことなのに、俺を仰向けに寝かせ、俺に跨った丈の眼は意地悪そうに妖しく光っていた。  な……なんで……そんな顔するんだよ!   「えっ? だって……それは理由をちゃんと話しただろう」 「あぁ、全部聞いている。だが、頭では理解できても、やはりそうではないようだ」 「じょっ……丈だって……あの人と会ったりしていたじゃないか! 会って何をしたんだよ?」 「あぁ彼女とはバーで一杯酒を飲んで別れた。彼女ときちんと向き合って、やはり私には本当に洋だけだと実感できたよ」 「そうだったのか。俺だって女性と沢山話したりしたけれども、やっぱり丈しかいないと思ったから同じだな」  もう満足するだろうと思ったのに、丈は今度は俺の両手を万歳するような形でシーツに押し付けてきた。 「でも……ここを勝手に卒業してしまうなんて……どれ見てやろう。何が変わったのか確認しないとな」  いきなり丈の手が俺のパジャマのズボンに伸びて来た。そしてそのままずるっと下着ごと下げられて焦ってしまう。急に下半身を裸に剥き出しにされ、羞恥心が込み上げてくる。  全く、丈はいつだって性急だ! 「おっ……い? 急すぎるよ!」 「今日は私で沢山気持ち良くなれ」  そう言い放つと、丈がいきなり下半身に口づけてきた。そのまま熱い舌を這わしてべろりと豪快に舐めあげられると、まだ小さかった俺のものに熱がぎゅっと集まっていくのを感じた。  次に舌先で鈴口をノックするように突かれ、口腔内にすっぽりと全体を吸い込むように含まれ、しゃぶられて、一旦出されたかと思うと、今度は細かくちゅっちゅっとリズミカルに吸い上げられた。 「んっ……あぁ!」  全然違う。あれとは違う快感が駆け巡る!    人工的に引き起こされた快楽とは比べ物にならない気持ち良さに、涙が滲んでしまう。跳ねようとした腰は、丈の体重をかけられ動かない。丹念に弄られ、もうたまったもんじゃない。 「丈っ……ちょっと待って!」 「駄目だ。ひとりでしたお仕置きだ」  そんな風に触れられたら、呆気なく陥落し勃起してしまう。今度は丈が固く張り詰めたものに、長い指先に絡めて締め付けるように扱いてくる。 「あぁ……っ……駄目だっ。いっちゃう!すぐに」  丈の指の動きは、俺が気持ちよく感じる最高のリズムで攻めてくる。もう、たまったもんじゃない。ゴッドハンドって言うのは本当だ。外科医として器用な指先は、こんな所でも役立つのだ。 「もうっ……もう……出したい!」  懇願したのに……今日の丈は意地悪だった。  丈が突然どこからか細い紐を取り出し、俺の根元を縛り上げたのだ! 溢れそうだった欲望が急にせき止められて、苦しくて涙が滲んでいく。視界がぼやけていく。 「んっ……丈っなんで……」 「一緒にいこう。洋は私の手でしかイクな!」 「あっ……そんなっ」  滅茶苦茶なことを言って酷いことをされているのに……それすらも全部快楽で気持ち良くなって……丈になら何をされてもいいと思う……いつもの俺になっていた。 「あっ……ふっ」  長い指先はいつの間にかゼリーのような潤滑剤を纏い、俺の後ろの孔につぷっと入ってきた。そのままぐるりと掻き混ぜられ、襞を薄く伸ばされたり、際どい入り口をじれったく擦られたりして、下半身が快楽で染まり、細かく痙攣したように震え出した。 「そろそろ、挿れるぞ」  俺の片脚は丈の肩にかけられ、屹立が自分の眼でもはっきり見えていた。根元を赤い紐でキュッと結わかれたままで、先端から白い露をトロトロと出していた。  な……なんて卑猥なんだ!  きつくて痛いのに、痛くて気持ちいい。  丈の想い、まっすぐに届く熱が、心地いい。  丈のものが、俺の躰に徐々にめりこんでくる。そして根元まで入ったところで、互いの下半身と下半身を擦り合わせるように、丈が激しく上下に動いた。  奥の奥に届く──  俺の快楽を、丈が解放していく。  気持ちいい──  あんな道具なんて、もう必要ない。  丈の肉体によって気持ち良くしてもらうのが、好きだ。  思わず丈の肩に両手を伸ばし抱きついた。 「丈っ……丈の全てが好きだ」  共に果てる瞬間に赤い紐は解け、脳裏には月輪を揺らす二人の影が映った。  カラン……  カラン……  幸せを奏でる月輪を首から下げているのは、ヨウとジョウ。  遠い遠い昔の話だ。  君たちもこの部屋で、こうやって愛を紡いだのか。今も昔も変わらぬ営みという行為が、まるで俺を時空旅行へと連れて行ってくれるようだ。 『洋……君の人生を謳歌して欲しい。俺達はもう大丈夫だから、安心しろ』   ヨウ将軍の声が降ってくる中……昇天した。  淡い月光が舞う部屋で、俺達は互いの肉体をしっかり抱きしめていた。  もう離れない、二度と離れない。

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