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心通わせて 5

「丈……今日も不思議な縁を感じたな」  母屋から離れに戻り、ようやく丈と二人きりになった。 「この世は見えない縁によって導かれているようなものだ。それを私たちは一番よく知っているだろう」 「そうだな、特に強い過去からの縁を持つ俺たちだもんな」  もうだいぶ朧気になってきているが、確かにあった過去との邂逅。  洋月やヨウ将軍のことは、忘れない。  だが、もう彼らの気配を感じることはなかった。  きっとそれぞれが、それぞれの場所に根差して生きているからだろう。  俺もこうやって、どんどん自分の居場所を作っている。    しかし……まさかお祖母様から譲られることになった由比ヶ浜の家が、翠さんと流さんにも縁があったなんて驚いた。  海里先生という方は、どんな人だったのだろう。生涯を共にした柊一さんという方にも興味がある。  俺と丈も、彼らのように穏やかに歳を取りたい。  もう一生分の苦労は背負った。だから願わずにはいられない。  平穏無事な日々が、一日でも長く続きますように。 「洋、ちょっと来い」 「何?」  丈の前に立つと突然シャツの襟ぐりをグイと引っ張られて、中を覗かれた。 「‼」 「ふっ、やはり丸見えだな」 「な! また、さっきの話をぶり返すつもり?」 「ぶり返す? 私は今になって、ようやく見られたのに?」  も、もうお前はいつもそんなことばかり。  俺は今、真剣にしんみりとお前との未来を考えていたのに……!  先ほどまでお祖母様の家ではスーツを決めて、ビシッとしていたのが台無しだ。でも憎めない。それに丈の視線を浴びた乳首は、触られてもいないのにツンと立ち上がっていた。 「見たからには……せ、責任取れよ」 「あぁ、もちろん」 「でもシャワーを浴びさせてくれよ」 「どうせ汗だくになるのだろう」 「もう――」  **** 「翠……翠、その涙の理由を教えてくれよ」 「この涙か、これは嬉しいからだよ。今、流とこうやって唇を重ねられることが」 「あぁ……俺もだ。触れたいと思うと翠が触れてくれる。それが嬉しくてな」  僕の膝枕で眠る流の髪を、手櫛で梳いてやった。  髪が随分伸びたな。いつも濃紺の組紐で結わいているが、解くと結構な長さだろう。 「なぁ……流はどうして髪を伸ばしている? 大学生になってからかな、ずっとだね」 「……最初は願掛けだった」  髪には神様が宿ると言われている。髪を伸ばす、つまり髪を切るのを断つことにより、願いの効果を強くするという方法があるのだ。   「ふぅん、何を願ったんだ?」 「おい、翠は意地悪だな。今更聞く?」  突然視界が反転した。 「えっ?」    膝枕してあげていたはずの流が、僕を真上から見下ろしている。 「翠……もう少し触れさせてくれ」  首筋を舌でべろりと舐め挙げられ、ぞくぞくと身体が期待に震える。  そこはとても弱い場所だから、過敏に反応してしまう。  そのまま浴衣の襟をバッと開かれた。袈裟と違って容易に乱れていく姿に唖然とした。  気付くと平らな胸が、月光に晒されていた。  覆い被さっていた流が、勢いよく乳首をぺろりと舐めて、腰が跳ねた。 「ん……っ」  抗えない快楽の波に、また飲み込まれてしまう。   「昼は途中までだったろう。直に触れてさせてくれ、見せてくれ……吸わせてくれ」 「こ、言葉が卑猥だ!」  流が僕の胸を愛おしげにちろちろ舐めて、しゃぶってくる。 「りゅ、流……」 「何故咎める? さっき翠だって怒っていたじゃないか。僕のを見ればいいと」 「も、もう――だからってこんな場所で……」 「ここだからだ。ここは俺たちだけの場所だから、俺たちの家が完成したら部屋に連れ込んで翠を裸に剥くのに……これでもかなり我慢しているんだ!」  苦しげに呻く弟の姿が、何だか可愛くなってきた。 「分かったよ。お前は、そんなにここを吸いたかったのか。いいよ……流の好きにしたらいい」  僕は流に相当甘い……それは分かっている。  僕も気持ちが良くなってしまうので、もう抗えない。  洋くんの問題がいい方向に収まり安堵したのか……いつもよりも寛大に流に流されていく僕がいた。  こんな夜もいい。  二人は心を寛がせ……互いに求め合っていく。     

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