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クリスマス特別編 月影寺の救世主 3
「洋、おばあ様から手紙が届いていたぞ」
「本当か!」
クリスマス・イブ。
帰宅した丈から手渡されたのは、祖母からの手紙だった。
「どうした? すぐに開けないのか」
「宛先が、丈と連名になっているから」
「そうなのか」
「だから、あとで一緒に見よう」
張矢 丈様
洋様
俺たちの名前が、真っ白な封筒の上に仲良く並んでいる。
おばあ様の字は母さんの筆跡と似ているから、そっと触れると、ふわりと懐かしい気持ちになった。
仕事では『浅岡』のままで通しているので、新鮮だ。
「はりや……よう」
そう呟くと、コートを脱いだ丈が俺を背後から包み込むように抱きしめてきた。
「洋は浅岡や月乃でなくて良かったのか」
「当たり前だ。丈と同じ姓を名乗れることが、俺にとってどんなに意味があり幸せなことか分かるか」
これは、過去の俺がどんなに望んでも叶わなかった夢だよ。
その晩、俺はパチパチと燃える暖炉の前で、裸にされた。
「丈? こんな場所で俺を抱くのか」
「クリスマス・イブだからな」
「ふっ、理由になってないよ」
「私は燃え上がるような恋をしている、今も昔も」
「最高の言葉だよ」
丈とソファになだれ込み、身体を重ねて思うこと。
俺たち、何度目のクリスマスを迎えた?
確かあの日は、雪が降っていたな。
俺は丈をひとりぼっちで待っていた。
寒い寒いホワイトクリスマスだった。
白い息を吐きながら裸足で丈を出迎えた日から、少しも色褪せない想いがここにある。
この身に丈を迎え入れて共に果てた後は、白いブランケットに二人で包まれて、おばあ様からの手紙の封を切った。
中から出てきたのは、繊細なカットのクリスマスカードだった。
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