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天つ風 11
「うっ、う、あぁっ」
「どうだ? いいか」
「ん……いい……もっと……もっと奥へ来いよ」
洋が目を細めて、私を誘う。
もっともっと深い所へと来いと。
「あぁ」
今一度洋の腰を抱えなおして、腰をグッと深める。
熱い襞が私を呑み込んでいく。
「洋の中は相変わらず熱いな」
「丈のは……大きい、すごい圧迫感だ」
「苦しいか」
「いや……満ち足りているよ」
「そうか。受け入れてくれてありがとう」
洋と知り合って10年近く経つ。
初めて抱いてから、今日まで、そして、この先も止むことのない欲情。
そのまま腰を打ち付けると、洋が悶える。
背中と胸板にうっすら汗をかいて、シーツで波を打つ。
「丈……俺っ……毎晩のように……丈が欲しくて溜らない。こんなの……節操ないか、変か」
「いや、私もだ。止まない雨はないというが、洋への欲情だけは止まない」
「ふっ、一緒だな」
「だから安心して抱かれろ」
「あぁ」
男の平らな胸なのに、私には禁断の果実のように感じる。そこを舌で蹂躙し、もう片方の手で眺めの黒髪をかき分けて、綺麗な形の額に口づけをしてやる。
愛おしさが増していく。
そのまま手を頬から首筋、胸、腰のラインを辿って窄まりへと這わす。
「あ……そこ、いやだ」
「どこが」
「変になるよ」
今一度、胸の粒を舌で転がせば固い芯を持ち、吸い付けば赤く充血する。
「気持ち良さそうだ」
洋のものも勃ち上がっていたので、扱いてやる。
「あ、あぁ……駄目だ。また出るっ――」
何度目かの吐精をした後、洋は意識を飛ばすように眠ってしまった。
私は洋の寝顔を暫く眺めて、満足した。
それからおしぼりで身体を拭き、私が身体の中に吐き出したものも掻き出してやる。
洋はそれでも起きない。
よほど疲労困憊なのだろう。
抱かれる方の負担は重いのを知っているので、精一杯労ってやりたい。
「洋、今宵もありがとう」
ベッドから降りると、グゥーと腹が盛大に鳴った。
やれやれ、子供みたいだな。
性欲が満たされた途端、これか。
私は洋の剥き出しの肩に布団をかけてやり、そっとその場を離れた。
そのままサッとシャワーを浴びて、流兄さんが持たせてくれたおにぎりを頬張った。
「流石、上手いな」
夜食用に作った質素な塩むすびだったが、塩分が汗をかいた身体には最高だ。
やれやれ、節操ないのは私の方だな。洋を抱く前に腹ごしらえをするつもりだったのに、私を想い自慰に耽る洋を目の当たりにして、理性がぶっ飛んでしまった。
窓の外には大きな月が浮かんでいる。
月影寺は月の寺。
古から月に守られている。
今頃、あの二人も同じように抱き合っているのだろうか。
私と血を分けた兄たちが一つに繋がることにより、月影寺の結界が一層強くなる気がする。
秘めたる想いは、秘めたる場所を生む。
****
「あ……流、もうそれ以上は……だめだ」
「どうして? このままなだれ込んでもいいんじゃないか」
「離れに、おにぎりを持って行こう」
「え? どうして?」
「流のエンジンが途中で切れたら嫌だからだよ」
はぁ?
またまた、この兄は可愛いことを。
だが、一理ある。
俺は皆に食べさせるのに夢中で腹が減っている。
途中でエンジンが切れるのはかっこ悪いな。
「じゃあ、速攻握ってくるよ」
「待って、流、僕も一緒に作ってみたいんだ。ほら、薙の体育祭にはお弁当がいるだろう。お父さんのおにぎりってどうかな? 練習してみたい」
ひぇー
小首を傾げて微笑む翠め!
そんなことしたら、夜が明けちまう!
「あ……あぁぁ、そうだなぁ……うーん」
「流、なぁ駄目か。兄さんも作ってみたい」
「あぁ……チェッ、分かったよ」
「やった!」
子供のように無邪気に喜ぶ翠は可愛かった。
「流、あとでご褒美があるから」
今は兄さんモードなんだなと思うと、やっぱり憎めない。
俺は翠に甘すぎる!
だが翠の笑顔が一番だから、それでいい。
翠の笑顔を守るのが、俺の使命だからさ!
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