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August 7.2015 たまには・・・甘々で(北海道はこの日が七夕)

「土日、フルはちょっときついけど、ランチか夜は店にでようかなって思ってさ」 まったく。 素っ裸でベッドの上に転がっているときに言う事かよ。なんかもっと、こういう場面じゃないと言えないような恥ずかしいこととか、普段言えないようなことを言ってみたりとかは? そこまで考えて、無理だよなと気が付く。俺達は男だし、ベタベタするのが好きなわけではない。それなりにスキンシップはあるけれど、始終くっついているわけでもないし、サッパリ目だと思う。でもここで仕事のスイッチをいれるかって話だよ、武本。 「きついだろ、俺は日曜と祝日しか通ってなかったけど、それなりに体力いったぞ?」 「それはわかるけどさ、気が急くって言うか何もしてないの俺だけじゃない?」 何もしていないことはない。データさらったり、POPつくったりメニューだって武本が着手して随分見やすくなったし戦略がのっかり数字に跳ね返ってきている。 いや、そうじゃない。今までの甘い時間はどこに? 甘ったるい昂揚感が徐々に引き始めて、素っ裸でいることが恥ずかしくなってきたから、むっくり起き上がる。 「飯塚?」 「なに?」 腕が掴まれた。振り返って見下ろすと武本が俺を見ていた。ゆらゆら濡れた瞳が見返してくる。 「どこいくの」 「どこって、真面目なこと言いだすからちゃんと聞こうかと。何か着ようかと思ってさ」 「ごめん……」 上半身だけ起こして振り返る姿勢だったせいか、強く引かれてあっさりと背中からベッドに沈んだ。横向きになった胸に武本の頭がコテンと触れた。 「なんだか少しおかしいんだよ、俺。課長に俊己さんの事を聞いてから気持ちが強くなったけれど、それと同じくらい怖くなった」 「どうした?」 頭を胸の中に抱え込んで、頭のてっぺんにキスをする。髪は情事の名残か汗で少し湿っているけれど、そこに唇を落すことに何の抵抗もない。武本に汚い所は何もないと思えるほど俺はイカレている。 「飯塚はいなくならないよな」 「なに言って……なるはずがない」 「俺だけ会社にいて、そんな時に消えたりしないよな。 俊己さんみたいに置いて先に逝くとかないよな。バカなこと言ってるのはわかっているよ。そんなこと誰にもわからない。 でも飯塚がいなくなったら俺どうするんだろって、最近それをよく考えるんだ。そして怖くなる。 だからちょっとでも傍にいれば、防げるような気がしたり。おかしいんだよ、俺」 全然おかしくない、俺だって同じだ。 「同じだよ。どんな形であっても俺の傍から居なくなる武本を想像するだけで、じっとしていられなくなる。 他の女でも男でも、何であっても、俺から奪うというなら精一杯抵抗してやる。 こうやって今はお互いを確認できているだろ? 一緒に住めば、この時間が増えると思ったんだ。同じ場所で同じものを食べて、同じ空気吸って、同じものを見て聞く。 きっと「怖い」より「安心」が増える、そう思わないか?」 「ん……思う」 背中に回ってきた腕が温かい、胸に触れる武本の額から体温が伝わってくる。 「温かい」この存在こそが、俺の心を温めて前に進むことを促す。ますますデキる男になっていく武本に置いて行かれないように自分を磨く。 「男前だな~」そう言ってもらえるように。 「お前こそ男前だな」と自信を持って言い返せるように。 かけがえのない存在というものは、こういう想いを乗せられる相手のことだ。そんな風に今まで思えた相手がいなかった。 「服着るのやめる」 腕の中で武本がクツクツ笑った。 「最初っから俺はそんな気ナシ。飯塚?」 「ん?」 「自分でおかしいと思うくらいにさ、俺はお前が好き」 何を……不意打ちすぎじゃないか! 「俺を一人にしたら絶対に許してやらないからな。されたら嫌だから、俺も絶対しない。 約束する」 身体を反転させて武本の身体に乗り体重をかけた。背中にまわった手がタップするようにペチペチと肌を叩くが許してやるものか。俺を本気にさせた武本が悪い。窒息してしまえ、そんな強い気持ちをのせて唇を塞いだ。 鼻から漏れ出る呼吸がお互いに甘くなってようやく離す。 上気した肌と濡れた瞳は容赦なく、俺を突き動かす。 「くるしいってば」 「俺は言ったぞ?」 「なにを?」 「服を着るのやめるって」 武本はニヤリと微笑む。俺以外にそんな顔見せるなといいたくなる色気満載の微笑み。 誘われるように組み敷いた身体に沈み込む。熱い肌が欲するものが同じだとわかるから、迷わず相手を自分に取り込むために動き出す。 結局のところ、俺は何をしても勝てる気がしないよ……ヤサ男さん。

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