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今、その時 1

 朝日と共に目覚め、隣に寝ているジョウの心臓にそっと手を当てた。  ドクッドクッ……  規則正しく脈打つ心臓の音に安堵する。  生きて……傍にいてくれるよな。今日もジョウの存在に感謝する。  君が傍にいてくれさえすれば、俺は過去の出来事をすべて封印して、ジョウとの未来を考え前向きに生きていける。  ── ジョウ目覚めたら裏山に来てくれ ──  手紙を残し、そっと寝床を抜け出し手早く訓練着に着替え、裏山に駆け登った。 ****  『雷光』  俺が生まれ持った力。自分自身の躰から空を駆け巡る雷を作り出せる力だ。  この不思議な能力のことを……まだジョウには、きちんと話せていなかった。あとでジョウがここへ来てくれたら全てを打ち明けよう。雷光を作る力を持っているのが知れ渡ると、国や権力に無理矢理この力を貸さなくてはいけなくなるので危険だから、亡くなった師匠から「隠し通せ」と言われていた。隠さないといけないような力を俺自身どうしたら良いのか分からず、いつも戸惑っていた。  今、目を閉じれば、師匠の言葉を再び思い出す… 「いいか……よく聞け。ヨウよ。その雷光は決して人に見せてはいけない。だがその雷光は遠い昔からの言い伝えによると、逢いたい人と逢いたい人を結びつけることが出来る力があるそうだ。本当に使わなくてはいけない時、その時が来たら自然に分かるはず。その時は躊躇わずに使いなさい」  以前遙か彼方で思い悩む俺の片割れのような奴に、俺の想いを届けることは出来た。だが現実に俺の世界に来てしまった人間と俺の世界の王様を、遙か彼方へ託す方法なんて知らない。師匠が生きていらしたら、助言してくださったのだろうか。  目の前に額当てを置いて、じっと見つめる。  辺りに人がいないか確認してから、目を閉じて腹の丹田に気を思いっきり込めていくと、次第に指先がチカチカと光り出し、更にその光は電流となって体中を駆け巡り、力が満ちていく。 「はっ!」  完全に満ち足りたところで、一気にその額当てに向けてその力を雷光に変えてはじけ飛ばす。額当ては雷光に包まれ光り、風に乗るように一瞬浮かんだが、数歩先で落下した。 「くそっ!駄目だ……分からない」  どうやったら王様と赤い髪の女を時空の彼方へ飛ばせるのか。額当てすら動かせないのに、人間を動かすなんて到底無理だ。遙か彼方からあの赤い髪の女は確かに雷光に乗ってやってきたと言っていた。俺のこの力がうまく使えれば、あの女と王様を遙か彼方へ送ることができるのでは……そう思うのに、その術が分からずもどかしい。  時間がない。王様の病は日々進行している。  ジョウが昨日不安げに呟いていたではないか。  一刻でも早く解決しなくてはいけない問題だ。

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