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第34話
自宅に戻ってきても、九尾はなかなか眠れなさそうだった。布団の上に膝を抱えて座り込み、じっと一点を見つめている。
少しでも気休めになればと思い、晴斗は蜂蜜入りホットミルクを作って彼に持っていってあげた。
「……ありがとう」
呟くように言って、九尾はホットミルクを一口飲んだ。そして長い息を吐くと、両手でマグカップを包みながらポツポツと話し始めた。
「……すまない。面倒をかけてしまって」
「いや、いいよ。もともと九尾の封印を解いちゃったのは俺だしさ。乗りかかった船だし、とことん付き合うぜ?」
「…………」
「でも、晴明さんにお参りしたいなら前もって言ってくれよな。一言もなく出て行かれると、俺も不安になっちゃうし」
「……すまない。もう二度とあそこには行かないから」
「あ、いや、お参りをやめろって言ってるわけじゃなくてさ……」
「……行っても意味がないと思ったんだ。いくら願っても、晴明どころか、彼の声すら聞こえなかったから……」
九尾は、睫毛を伏せてホットミルクを見つめた。悲しみの中に、うっすらと諦めの色が滲み出ていた。
――やっぱりハッキリさせておくべきなのか、これは……?
本当は聞いちゃいけないことなのかもしれない。だけど、このままでは九尾はいつまで経っても先へ進めない。晴明のことを引きずったまま、ネガティブな気持ちばかりが募っていく。一度ちゃんと向き合った方がいいのではないか。晴明に対する想いを全部ぶちまけて、苦しみをリセットした方がいいのではないか……。
さんざん迷った挙句、晴斗は思い切って核心に踏み込んだ。
「なあ……間違ってたら申し訳ないんだけど、九尾と晴明さんって恋人同士だったのか?」
「っ……!」
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