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第46話

 夏休み後半になって、晴斗は九尾と一緒に東京に戻ってきた。  九尾に出会ってから半月以上経過していたが、彼は少しずつ明るさを取り戻していた。もともと上品でおとなしい性格だから、大声で笑ったり大きなリアクションを取ったりはしないけど、出会ったばかりの頃と比べると明らかに表情が豊かになってきた。  この時代への興味も少しずつ湧いてきているようだ。 「晴斗、今日はどこに行くんだ?」  晴斗がどこかへ出かける時、九尾はほぼ一緒についてくる。すぐ近くのコンビニに行く場合はその限りではないが、ちょっと遠出をする時、電車やバスに乗って移動する時は、必ず「つれて行ってくれ」とお願いされるのだ。  夏休み中の課題を提出する際も、 「今日は大学にレポート出しに行くだけだから、九尾は留守番しててくれ」 「大学?」 「専門的なことを勉強する場所だよ。ここから歩いて行けるし、出したらすぐ帰って来るからさ。別に面白くもないし、暑いから家で待ってた方がいいぜ」  そう言って靴を履こうとしたら、九尾の耳が少し垂れ下がった。 「……私がついて行ったら邪魔になるか?」 「い、いや、そんなことないけどさ。でも行って帰ってくるだけだから、暑い中わざわざ出歩かなくてもいいと思うぞ?」 「それくらい平気だ。邪魔にならないならついて行きたい。晴斗が通っている大学、私も見てみたいし」 「いや~……でも本当に面白くないぞ? 文化祭の時期だったら別だけど、今は夏休み中で講義も何もやってないしさ……」 「……やはりダメだろうか。どうしてもダメなら留守番しているが……」  しょんぼりと肩を落とされてしまったので、晴斗は慌てて言った。 「あー、わかったよ! じゃあ一緒に行こう。でも、行ったらすぐ帰ってくるからな?」 「ああ、もちろん」  嬉しそうに耳と尻尾を引っ込め、靴を履く九尾。

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