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第94話

 案の定、すぐにフロアを走り回っているスタッフに見つかり、 「いたぞ! タヌキとキツネだ!」  と、追われる羽目になったのだが、人間たちが突撃してくるのを見るや、三尾は消火器のホースを彼らに向け、 「くらえー! 消火器攻撃ー!」  勢いよく消火剤を噴出させた。濃厚な白煙が廊下に充満し、目を潰された人間たちが大慌てで四散していく。 「あっはっは~! 消火器攻撃、超楽し~! 人間ども、もっとカモーン!」  何故か嬉々として消火器を振り回している三尾。戦っているのか遊んでいるのか、わからなような態度だ。  ――タヌキのヤツ、ホントにやりたい放題だな……。  追手は三尾に任せるとして、晴斗は玉藻前の控え室を探すことにした。  タヌキがバラ撒いた消火剤のせいで白煙が立ち込めていたが、なんとか目を凝らして控え室の名札を見て回った。 「……晴斗、あそこ」  九尾が煙の先を指差した。 「ここから四部屋行った先に、『たまお様 控え室』って書いてある」 「……九尾、よく見えるな」 「目は昔からいい方なんだ」  さすがはキツネさんである。  調子に乗って消火剤を噴きまくっているタヌキを引っ張りつつ、晴斗は九尾と廊下を走った。四部屋先の控え室には、間違いなく「たまお様 控え室」と書いてあった。凶々しい気配もこの部屋から漂ってくる。  ――ここに玉藻前がいる……!  今更ながら緊張がこみ上げ、掌が汗で濡れて来た。  だが、ここで立ち往生していても仕方がない。晴斗は勇気を出してドアに手をかけた。

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