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第9話
そう言った途端、浩一が明らかに動揺したのがわかった。
「オレさー中学ん時、おまえのこと好きだったんだよね。思いつめて告白しそうなほどおまえが好きでさ」
だから、高校進学を機に連絡を絶った。中学以前の友人全てと。
県外の高校に進学して、帰省も最小限にして。高校を卒業した後は、髪を染めストレートパーマをかけて、一見では以前の自分だとわからないようにした。
そこまでして浩一との関係を絶ったのに、なんでまたおまえはオレの人生に顔を出してくるんだろう。
「じゃあな、浩一」
「……ま、まて、遠藤……」
「きおっ!!」
初めて下の名前を呼ばれて、オレは思わず足を止めた。振り返るのをぐっとこらえて、声を絞り出す。
「さようなら、浩一」
あまりにもしゃがれた声だったから、伝わったのかは定かじゃない。
でも、その日、オレは。
初恋にもう一度、さよならを告げた。
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