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第45話 快感の波

※具体的な性描写を含みます。苦手な方は、読み飛ばしてください※ 「京……スローセックスしようぜ」 「えっ……」  一瞬あって、京は肌という肌を淡く桜色に染めていった。戸惑い答えあぐねている京に、それがどういうものか教えてやる。 「大丈夫だ、痛い思いはさせない。気持ち良いだけだ」 「よく分かんないけど……う、うん……」  小さく呟き、恥ずかしそうにしている京を、ソファの隣に座らせる。 「まずは、一緒に風呂入るか」 「えっ」 「良いだろ」 「で、でも……恥ずかしい……」  そう言って顎を下げ、上目遣いに俺を見上げてくる京を抱き締めると、躊躇いがちにだが、京もおずおずと抱き締め返してくる。恥じらいなんかは、頭を空っぽにしてしまえば良い。俺は京の顎を掬い上げるように捕らえ、唇を重ねた。 「んっ……」  京の頬を両掌で挟み、どんなスイーツよりも甘い京の舌を食む。京も慣れてきたようで、うっとりと瞳を閉じて舌を差し出してくる。絡め取って優しく吸うと、掠れた呻きが湿った音と共に上がった。  口付けに心酔している間に、俺は京のシャツのボタンを外して脱がせてしまう。後は、ジーンズだけだった。ベルトを外しジッパーを寛げ──だがここで、京が申し訳程度に抗った。 「やっ……」  だが京の分身は、口付けだけですでに形を成している。構わず俺は、京のジーンズを下着ごと取り去ると、横抱きにしてバスルームへ向かった。多少強引だが、京は大人しく落ちないよう、俺の首に腕を回した。  シャワーを出し、先に京を入れて、俺も服を脱ぎ捨てる。バスルームのドアを閉めると、所在なさげにしている京を優しく抱き締め、二人して、頭からシャワーを浴びた。 「洗ってやるよ」  ボディーソープを手に取り、京の肌で泡立て、滑らせる。 「えっ、自分で……ぁんっ」  反論は胸の尖りを擦って塞ぎ、あらゆる場所を滑らかに愛撫する。特に下肢は入念に洗う。元々期待に反り返っていたそこは、紅色(べにいろ)に色付いて脈打ってきた。 「あっ、あ、駄目っ……」  言葉とは裏腹に、京は俺の肩にしがみついて衝動を堪える。吐息が耳に触れ、それが余計に俺を煽るとも気付かずに。 「我慢しなくて良いぞ……イけよ」  京の耳に、直接低音を吹き込む。それに感じて、京はぶるりと一つかぶりを振った。緩急をつけてボディーソープで追い上げると、泣き声にも似た嬌声を上げ、俺にしがみつきながら京は愛液を溢した。 「はぁ……」  腰が抜けたようにずり落ちそうになる京を抱き止め、シャワーで京の身体を流す。達したばかりの分身にシャワーが当たると、ビクビクと京は身体を跳ねさせた。  再び、抱き上げてベッドに運ぶ。京の息が整うまで、向かい合って横になり柔らかく抱き締め、濡れた髪を撫でた。頃合いを見計らって額に口付けると、視線を合わせて、吐息と共に京が訊いた。その単語を口にする事への羞恥か、躊躇いがちに。 「真一……ス……スローセックスって、何……?」 「こうやって抱き合って、気持ち良くなる事だ」 「こう……?」  俺の背にも、京の腕が回った。 「そうだ。ついでに、こう」  言って、京の片手を俺自身に導く。 「えっ……」  その硬い感触に昨夜(ゆうべ)の痛みを思い出したのか、一瞬腰が引けた京だが、俺も柔らかく彼の分身を握り込んで刺激すると、すっかり身体の力が抜けた。 「あ……」 「気持ち良いだろ?」 「うん……」  ゆるゆると掌を上下させて京を刺激すると、彼は切なげに息を吐き、俺を真似て俺自身を握ってきた。 「真一、気持ち良い……?」 「ああ。良い子だ」  京になら、触れられているだけで硬度が増した。それだけ、愛しているという事か。微かに微笑んで、心地よさはそのままに、中指と人指し指を口に含んで湿らせた。 「京、片膝立てろ……もっと気持ち良くしてやる」  恥じらいながらも言葉通りにする京の奥に、二本の指を忍ばせる。昨夜探り当てた一点を、ごく優しく撫で、同時に花咲かせるように指で拡げた。 「んっ……あっ、ぁ……」  京が僅かに息を乱す。五分ほどそれを続け、(とろ)けた京の表情を味わいながら、俺は指を引き抜いた。後はまた、互いに互いのものを握り込んで微睡む。 「このまま眠ろう……おやすみ、京……」 「ん……おやすみなさい、真一……」  おやすみのキスを交わし、俺たちは快感と眠気の狭間(はざま)に落ちていった。吐精する事はなかったが、緩い絶頂が波のように満ちては引いて、幸福感に包まれて瞳を閉じた。

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