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♪おまけ♪

年の瀬も押し迫ったある日、吉野の家で偶然会った羽鳥と柳瀬の二人。 羽鳥は眉間に皺を寄せて、ドンッと高級菓子店の紙袋をローテーブルに置く。 途端に吉野の目が輝く。 「なに?なに?」 「差し入れのケーキだ」 「わあトリ、さんきゅ! あー食べたい! 今、食べていい?」 「ああ。好きにしろ」 「じゃあ俺コーヒー淹れてくる!」 吉野がうきうきとソファを立つ。 吉野の姿がキッチンに消えると、柳瀬が漫画から顔を上げて羽鳥を見た。 「お前、クリスマスパーティーの時のウサギの千秋の写真撮った?」 「…いや」 あの時の羽鳥は、パーティーの邪魔をしないように、吉野とメリークリスマスと言い合って別れただけだ。 「俺さあ50枚くらい撮っちゃった。 あ、勿論動画もな。 アシの子達が撮ったのも貰ったし…何十枚になるかな~」 「…だから何だ」 羽鳥の眉間の皺が益々深くなる。 「お前にお裾分けしてやろーかと思ってさ」 「はあ!?お前が俺に!?」 羽鳥が驚きの余り前のめりになる。 柳瀬がニヤリと笑う。 「そうだよ。 あの超かわいー千秋を全部転送してやるよ」 「…条件は何だ?」 「流石、万年副編集長!察しがいいな」 「うるさい! 条件をさっさと言え!」 柳瀬のアーモンド形の目がキラリと光る。 「次の修羅場に絶対顔出すな」 「…なに?」 「一度でいいから鬱陶しいお前の顔見ないで原稿上げたいんだよ。 まあ永久に見なくてもいいんだけど。 バイク便でもファックスでも電話でもメールでも使えるものは全部使ってお前は来んな!」 「……」 次の修羅場の羽鳥からの差し入れは、全て宅配便だった。 ~fin~

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