ああ、退屈だ。この世の何が楽しいのか、僕には皆目見当がつかない。 　仰向けの状態で手足を投げ出し、自室の天井の木目を数える。くだらんことだと思い至ると、自嘲気味に笑みを溢した。 　ふと、某(なにがし)の作品で屋根裏を探索する、というものがあったことを思い出した。 　面白い事を考える者がいるものだな、と長いため息を吐き出す。そこでふと、思い至る。 　確か、その話の男もあまりの退屈さに、珍妙な行動を起こしていたのではなかっただろうか。生憎(あいにく)、今の僕も退屈さを持て余している。試して見る価値があるのかもしれない。僕は思い立って、体を起こした。 　この六畳一間の下宿先は、何人か同じ大学の学生が生活をしていたはずだ。何かしら面白い物が、見れるのかもしれない。 　頬が緩み、心臓が激しく暴れだした。久方ぶりの高揚感に、僕は急(せ)くように立ち上がると、押入れの襖を開く。 　上段には布団が一組、下段には衣類の入った行李が二つ押し込められている。埃を警戒し、一先(ひとま)ずは布団を外に投げ出す。 　再び、押し入れの天井を見上げる。案の定押し上げてくださいと言わんばかりに、一箇所だけ薄い板が敷かれた場所がある。 　軽く手で押し上げてみると、重さがあるものの、力を入れると少し持ち上がった。 　今度はぐっと両手で押し上げてみると、どさりと何か中で音がして板が外れる。中から重しを置いていたようだった。 　開いた箇所から埃が舞い、頭上に降り注ぐ。思わず頭を引っ込めると、顔を顰めた。 　落ち着いた頃を見計らい、上段に体を入れる。そこから体を伸ばし、天井の開いた場所に頭と腕を先に入れてみた。部屋からの光以外は、真っ暗で先がよく見えない。腕の力で何とか体を持ち上げ、這うように体を滑り込ませた。