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第一話 俺が恋愛恐怖症になった訳

愛してる。そう思っていたのは俺だけだった。 あんなに愛してたのに、始めての同性の恋人で、理解もしてくれた上で付き合ってくれたと思っていたのに。 だったら、最初から付き合わなければこんな思いもすることもなかったのに。 身を滅ぼすくらいの愛なんて要らなかったのに。 俺が愛してる。そういったのも好きだったから。好きじゃないのなら好きなんて言葉絶対言わない。もう終わった話なのに大嫌いにはなれなくて、大嫌いになれたならどんなに幸せだろう。愛した奴に奥さんが出来ても、子供が出来ても嫌いになれなかった。 とっくに未練なんてないのに。 好きで好きでたまらなかった。そんな人のことなんてそうそう忘れられなくて、、忘れたくても、幸せな記憶は消えることはないし、紡いできた記憶もずっと脳裏に残っている。幸せであればあるほどその幸せが無くなってしまうと、後には何も残らない。 好きで好きで仕方がなかった。体を繋いだのも、こいつが初めてだった。 男同士でもこんなに気持ちいいんだって、思えた。同性にしか恋が出来ない俺には、はじめての経験で嬉しかった。 でも、結局女の方に行ってしまった。 俺みたいな同性しか愛せない訳じゃなく、こいつはバイセクシュアルだったから。 いつか女の人に振り向いてしまうかもしれないこともわかっていた。 同性同士じゃ子供は出来ない。 子孫は残せない。だから俺の元から離れるんじゃないかって思っていたから。 本当に好きだったし、期間限定の恋だったとしても愛し合えた事実は変わらない。恋した分失うのが怖い。そんな事付き合ってた時から分かってたはずなのに。 でも、隣にいてくれるだけで隣にいるだけで幸せだった。 何もいらなかった。でも、初めての男だったからこそ想いが消えることもなくて、でも出会ったからこそ同性でも恋していいんだっていうことが実感できた。 もし、俺が女だったらなんて何回も考えた。そうだとしたら、あいつと一緒になれたのかな。 でも、そんな事無理だって分かっているのにまだ未練が残っているみたいだ。 そのときは少し、死にたくもなったし、この世界に絶望を感じて、どうやって死ねるのかなんて、調べたりもした。そんなことを考えても、結局、どうしてこいつのために死ななきゃならないのかなって考えて、でも死にたくて。 いっそ、その恋したときの記憶を全部消せたらどんなに楽なのだろう。  そんな技術が発明されていたなら、俺は絶対に使うだろう。 それが惨めだって言われても、無意味だって言われても、その記憶だけ消せたらいいのに。時が戻って幸せだった日々に戻れたならどんなに楽なのだろうか。 でもいつかその幸せが消えたとき、俺はまた同じ気持ちになるんだろう幸せだった分悲しみは深いんだって、最初に感じた。 あいつのために、涙なんか流したくないって思っていても、心の中では違くて、涙が出てしまう。嫌いどころか、大キライだけど裏切られたらこんなにも悲しくて、あんなに好きになったのが馬鹿らしくて、アホらしいと感じてしまう。 確かにあの時は好きだったし、愛してた。 こんな恋初めてだなんて、錯覚もしたりしてた。 実際別れたら、記憶ぐらいしか残らなくて、あんなに愛してるを言ってくれたのに、俺からもいっていたのに。

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