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第272話
田舎の役場は、――皆が親しみやすくて優しくて居心地が良かった。
まるで自分の家に帰ってきた様なアットホームな職場に思わず俺も頬が緩む。
「こんにちはー」
タイムカードに判子を押して、すぐに出かけようとした時だった。
「榛葉くん、今日の予定なんだけど」
「今日は一件、お風呂の補助とご飯を作るんでしたよね」
資格は持っていないから本当に先輩介護士の補助になってしまうんだけど。
「いや、――二件程追加してもいいかな。うちの区内じゃないんだが――どうしても君を指名らしくて」
「俺を指名?」
担当は既に決まっているから、使命と言う事は外部の人。
そう思って先輩から渡された予約表を見て言葉を失った。
この人は本当にどこにでも現れると言うか。
やーーあの事件以来初めて会うのかな。
俺を指名したのは、立花佐之助。
着付けの依頼とヘアカットと書かれている。
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