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第103話 コイゴコロ 2-2
この小さなケーキに二十六本のろうそくはさすがに刺すのははばかられたが、いまどきは簡略化された数字の形のろうそくがある。
出来上がったプレートを確認すると、隣にある顔は頬を紅潮させて喜びをあらわにする。そして手渡されたケーキの箱を恭しく持ち上げて、俺に向けて幸せそうに笑った。
「誕生日のケーキなんて久しぶりです」
「ダチに祝ってもらってんじゃねぇの?」
「プレゼントとかはくれるけど、わざわざケーキまで買ってくれるような気の利いた男はいないですよね」
「それもそうだな。ダチにケーキなんて買ってやらねぇわ」
肩をすくめて笑った瑛冶につられて、思わず吹き出すように笑ってしまった。
そこからマンションまでは十分とかからなかったが、夜になって一段と冷えたので家に帰るとすぐさまエアコンのスイッチを入れる。五分もすればキッチンからの熱も相まって部屋の中は徐々に温まった。
部屋着に着替え直して缶ビール片手にキッチンをのぞき込めば、小さな土鍋に入った焼きうどんがぐつぐつと煮えている。湯気と共に甘いめんつゆと砂糖醤油の香りが立ち上って、鼻先をかすめたうまそうな匂いに腹が鳴った。
「広海先輩、鍋敷き出してください」
「おう」
しばらくソファでくつろぎ待っていれば、顔を上げた瑛冶がこちらを見ていた。その視線と言葉にソファに預けていた身体を起こし、缶の底に残ったビールをあおるとダイニングに足を向ける。そして備え付けの戸棚から花をモチーフにした鍋敷きを二枚取り出して、テーブルに並べた。
「熱いからやけどに注意してね」
程なくして瑛冶がキッチンから土鍋を運んでくる。まだかなり熱いだろうそれと白米、インゲンの和え物、海老の天ぷら、マグロの刺身などがテーブルの上に並んだ。そのあいだに俺は冷蔵庫から缶ビールを二本取り出してテーブルに戻る。
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